Archives
連載コラム Vol.59
2006 ハーヴェスト・レポート No.1
  Written by 立花 峰夫  
 
 2006年のハーヴェストは、9月9日に始まった。昨年が9月3日、やたらと早かった2004年が8月17日、2003年は9月9日の開始だから、例年より若干遅めというところだろうか。最初に運び込まれた葡萄は、例年通りパソ・ロブレスのジンファンデルであった。その後、14日にソノマからガイザーヴィルとマゾーニの畑のジンファンデルが届いた。翌15日からは、モンテベロのシャルドネが摘まれ始めている。

 今年ややイレギュラーなのは、9月中旬時点から、ボルドー品種の収穫が本格化していること。18日から連日メルロが収穫され、21日にはカベルネ・ソーヴィニョンの最初の区画が摘まれている。通常、モンテベロのカベルネの収穫は10月に入ってからだから、かなり今年は早いことになる。一方、ジンファンデルの成熟ならびに収穫は、例年よりもゆっくりと進んでいる。いつもの年なら、9月中にジンファンデルの大きな山があり、それが落ち着いたあと、モンテベロのカベルネなどの仕込みが本格化するのだが、今年は両者が並行して進む形になっている。

 今年の生育期間、葡萄はやや極端な気候に見舞われた。春先は雨が多くて気温があがらず、葡萄の生育は遅れ気味になった。だが、7月後半には猛暑が続き、それまでの遅れが一気に解消されている(州南部のロサンゼルスでは、なんと48度という記録的暑さが記録された!)。収穫時期に入って天候は穏やかになったが、先だっての極端な気候が、今年の葡萄の熟し方になんらかの影響を及ぼしているようである。

 今年の収穫については、ここ数年の水準よりも若干低い糖度で、摘み取りがなされているのも特徴である。とはいえ、未熟な葡萄を摘んでいるわけではなく、風味の成熟を十分に見極めた上で、摘み取りの判断はなされている。最終的なワインのアルコール度数については、現時点ではまだなんともいえないが、若干低くなりそうな見込みである。リッジの強みであるエレガントさが、さらに洗練されたワインが生まれるのであろうか。

 発酵中のワインをタンクから試飲すると、しっかりとしたフレーバーが感じられる。手応えは上々である。今年もまた、先が楽しみなヴィンテージになりそうだ。
Archives
 立花 峰夫
 フリーのワインライター/翻訳者。
 2003年ヴィンテージには、リッジ・ヴィンヤーズの研修生
  として醸造を経験。