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連載コラム Vol.58
リットン・スプリングスの若い葡萄樹
  Written by デヴィッド・ゲーツ  
 
 リッジがリットン・イーストの区画を購入したのは1991年、リットン・ウェストは1995年である。それ以来、ソーヴィニョン・ブラン、セミヨン、メルロ、カベルネ・ソーヴィニョンほかの品種を引き抜いては、この驚くべき畑にもっと適した葡萄に植え替えてきた。適した品種とは経験上、ジンファンデル、プティ・シラー、カリニャン、グルナッシュ、シラー、ヴィオニエだとわかっている。

 1997年以降、リットン・スプリングスに新しく植えられた葡萄樹の面積は、32ヘクタール強にのぼる。シラーとヴィオニエは、風や低温による被害を受けやすいため、仕立てを低くせねばならないし、支柱とワイヤーの支えも必要である。ジンファンデルなどそのほかの品種は、ゴブレ(支柱もワイヤーも使わない方法)で仕立てられる。ジンファンデルなどの品種については、ワイヤーを使ってコルドン仕立てにしたときよりも、ゴブレ仕立てにしたときのほうが、強靭で複雑、興味深いワインが生まれやすいのだ。小さな子供と同じように、新しく植えた葡萄樹には十分な注意を払い(時にはお金もつぎ込んで)、可能性が開花するようにしてやらねばならない。

 リットン・スプリングスの畑においては、常にジンファンデルが主力品種であった。だからこそ、2004年に植えた小さな「遺産保存区画」に、我々は大きな関心を寄せている。この区画には、畑で選抜された7種のジンファンデルのクローンが含まれており(穂木は、禁酒法前から存在する様々な畑で採取された)、傍らにはプリミティーヴォのクローンも一種類植えられている。比較対象用に、カリフォルニア大学デイヴィス校で選抜されたクローンも、一種類は植えた。それぞれのクローンについては、葡萄樹そのものをしっかり観察するほか、造られたワインも官能評価する予定である。もっと植え付け面積を増やすべきクローンがあるかどうかを見極めたいのだ。

 ピケッティ、ハーツ・デザイア、プロンソリーノという三種類のクローンについては、以前から実験を続けてきている。この三種のクローンは、1991年にウィットン・ランチの区画に植えられ、ガイザーヴィルにとって不可欠な要素となった(2003年ヴィンテージにはクローンごとの醸造を行い、セット商品として販売もしている)。畑で採取し繁殖されたその他のクローンとしては、セント・ピーターズ・チャーチ、ワイン・クリーク、テルデスキ、モンテ・ロッソがあり、アレクサンダー・ヴァレー地区、ドライ・クリーク・ヴァレー地区、ソノマ・ヴァレー地区にある古い葡萄畑から採取されている。

 ワインの評価・分析が客観的なものになるようにと、それぞれのクローンは身元を伏せ、単に番号で呼ばれている。私とロンダ・スミス(ソノマ郡葡萄栽培指導員で、栽培データの収集・分析を手伝ってくれている人物)だけが、どのクローンがどこの畑で採取されたものなのかを知っているのだ。葡萄が成木になり、多数のヴィンテージでワインが造られるまでは、それぞれのクローンの品質を正しく評価することはできない。だから我々は、これからも当分のあいだ、葡萄樹の身元を伏せたままにしておくのである。
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 David Gates:デヴィッド・ゲーツ
 リッジ・ヴィンヤーズ副社長、栽培責任者