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連載コラム Vol.51
The unthinkable happened again!
  Written by 立花 峰夫  
 
考えられないことがまた起きた。5月24日に行われたパリ対決30周年記念イベント(前回コラム参照)の古酒部門で、リッジのモンテベロ 1971が総合一位に輝いたのである。1976年のパリ対決では五位、1986年のニューヨーク対決では二位、そして今回のロンドン&ナパ対決でとうとう一位となったわけだ。しかも、英米両方の審査員がモンテベロを一位に選んでの完全勝利である。ロンドンでは、二位以下を大きく引き離しての圧勝であった。
 今回の対決は、リッジのみならずカリフォルニア全体の完全勝利でもあった。英米合わせた総合順位で、一位から五位までをカリフォルニア勢が独占したのである。二位がスタグス・リープ・ワイン・セラーズ SLV 1973、三位が同点でハイツ・マーサズ・ヴィンヤード 1971とマヤカマス 1971、五位がクロ・デュ・ヴァル 1972。
 主催者のスティーヴン・スパリュアは、今回こそボルドーの赤が勝利するだろうと予測していた。だが結果はこのとおり。スパリュア自身も、モンテベロ 1971に最高点をつけたのであった。
 1976年のパリ対決の直後、フランスワインびいきの人々が口にしたのは、「試飲したワインが若すぎる、最高のボルドー赤が本当の姿を現すのはもっと後だ」という台詞だった。「カリフォルニアワインが旨いのは若いうちだけで、フランスワインのように熟成しない」とも言われた。だがそれは本当ではなかったのだ。30年は、最終的な判断を下す上で十分な時間だろう。リッジを含む最高のカリフォルニアワインは、長期の熟成を経てもなお美しく、それは最高のフランスワインをもしのぎうる――この事実が明らかになった意義はとてつもなく大きい。
 目下、ポール・ドレーパーのもとにはテレビ、ラジオ、雑誌などの取材が殺到し、対応におおわらわらしい。ポールはサンフランシスコ・クロニクル紙のインタヴューに答えて、次のように述べている。「1971年のモンテベロは、(1976年のパリ対決で、主催者の)スティーヴン・スパリュアが(当初)勝つのではないかと考えていたワインだ。大変バランスが取れていてエレガントなワインではあるが、もっと大柄なワインとの比較になるとどうかと考えていた。だから、冷涼な気候の畑から生まれた、エレガントでアルコールが低いスタイルのこのワインが認められて、非常に嬉しく思う」。
 なお、近年のヴィンテージの比較については、フランス勢、アメリカ勢を分けての試飲となり、英米対決はなされていない。そちらのパートでも、モンテベロ 2000はカリフォルニアの中で、英米総合一位に輝いている(正規審査員18名の合計点数。名誉審査員の採点を加えると二位)。
関連コラム:No.38 パリ対決30年、No.50 パリ対決30周年記念イベント

各ワインの採点結果など、詳細情報はNewsのページへ
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 立花 峰夫
 フリーのワインライター/翻訳者。
 2003年ヴィンテージには、リッジ・ヴィンヤーズの研修生として醸造を経験。