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連載コラム Vol.50
パリ対決30周年記念イベント
  Written by 立花 峰夫  
 
 以前のコラムでお伝えしたパリ対決30周年記念イベントは、1976年のテイスティングを再現するというものになった。オーガナイザーはもちろんスティーヴン・スパリュア。開催地は、パリならぬロンドンとナパの二地点同時開催。二つの会場はビデオリンクで結ばれるらしい。「判決の日」は、30年前と同じ5月24日である。
 テイスティングは三つのパートで構成される。まずは、30年前のテイスティングで使われた赤ワインそのものを比較するパート(スタグス・リープ・ワイン・セラーズのカベルネ・ソーヴィニョン1973や、リッジのモンテベロ1971、オー・ブリオンやムートンの1970など)。二つめのパートは、2000年、2001年あたりの新しいヴィンテージで、カリフォルニアとボルドーのカベルネを比較するもの。こちらの試飲には、オリジナルのパリ対決には含まれなかったワイナリーも参加する。そして最後はシャルドネの比較で、こちらは新しいヴィンテージのみで対決がなされる。
 審査員を務めるのは、英米の一流ジャーナリストであり、ジャンシス・ロビンソン、マイケル・ブロードベント、セレナ・サトクリフ、スティーヴン・ブルック、フランク・プライアルといった面々。30年前の審査員からは、唯一クリスチャン・ヴァンヌケ(パリの三ツ星、ラ・トゥール・ダルジャンの元ソムリエ)だけが参加する。ほかの人々は、忌まわしい記憶を封印するためか、参加を拒否したらしい。
 パリ対決の再現を快く思っていないのは、元審査員たちだけではないようだ。1976年に「名誉を傷つけられた」ボルドー側の生産者からは、かなりの反対がなされた。その意向を汲むために、今回の試飲は完全なブラインドではなく、カリフォルニア産かフランス産かをあらかじめ審査員に知らせる形となった。
 スティーヴン・スパリュアは、対決のゆくえについて次のように見ている。「第一ラウンドでは、ボルドー赤の長い寿命が明らかになるだろうと思う。だが、最近のヴィンテージの比較では、どちらが勝つかはわからない」。ポール・ドレーパーは、「リッジの1970年ヴィンテージなら、フランスに勝つチャンスがあるかもしれない。だが(1976年当時と同じ)1971年ヴィンテージでは、苦しい戦いになるだろう」と、珍しく弱気なコメントをしたようだ。
 次回のコラム(5月31日アップ)で、対決の結果をお知らせするのでお楽しみに。
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 立花 峰夫
 フリーのワインライター/翻訳者。
 2003年ヴィンテージには、リッジ・ヴィンヤーズの研修生として醸造を経験。