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連載コラム Vol.45
コルクor代替栓? No.2
  Written by 立花 峰夫  
 
 現在、代替栓と呼ばれるコルク以外の栓には、様々な種類がある。代表格はスクリューキャップだが、デカンターの蓋のようなガラス製の栓(ヴィノロック)、スクリューキャップとプラスチックコルクを合体させたような形状のゾークといった新製品も、ここ数年の間に次々と登場している。こうした代替栓の謳い文句は、天然コルクに見られるコルク臭のトラブルがないことに加え、酸素の透過量が遥かに少なく均一であること。なお、1990年代にシェアを増したプラスチック製の合成コルクは、酸素透過量が甚大なため、現在では「理想の栓」決定戦から脱落しつつある。
 ワイン、特に赤ワインの瓶内熟成にとって、酸素は必要なのか? 必要とする場合も、どの程度の量が理想的なのか? この問題については、未だ定説となるような科学的研究が皆無であり、目下議論百出の状況である。リッジは前回のコラムで書いたように「必要」という立場だが、代替栓を押す人々は基本的に全員が不要論者である。
 酸素透過に関していえば、天然コルクは相対的に多くの酸素を通すだけでなく、透過量にかなりのバラツキがある、という批判も昨今は盛んになされている。昔から知られる熟成したワインの「瓶差」は、この天然コルクの不均一に由来するというのである。さまざまな実験結果から、天然コルクの酸素透過量にバラツキがあること自体は確かだと思われる(天然素材ゆえ、多少は避けられない)。ただし、それが問題になるほどの程度かについては、やはり意見が分かれている状況である。数年の熟成で大きな差が出るという者もいれば、ほとんど影響がないと見る者もいる。リッジのポール・ドレーパー/エリック・バウアーは、「酸素透過量の違いによる瓶差が見られるのは、数十年の熟成を経た古酒のみ。微妙な差が現れるまでにも10年はかかる」と述べている。
 とはいえ、リッジでも代替栓の実験は行ってきている。1990年代前半にはプラスチック製の合成コルクで実験を行ったが、熟成が過度に早く進むため、早々に見切りをつけた。4年前からは、スクリューキャップとコルクの比較熟成実験を続けてきており、昨年にはガラス製の栓(ヴィノロック)も実験に追加しているが、今のところは天然コルクのボトルが一番良い熟成を見せているという。ただ、何が何でも天然コルクに固執しているわけではなく、「将来、天然コルクと同等か、それ以上の質で瓶内熟成を可能にする代替栓が登場した暁には、切り替えを真剣に検討するだろう」と、ドレーパー/バウアーは述べている。
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 立花 峰夫
 フリーのワインライター/翻訳者。
 2003年ヴィンテージには、リッジ・ヴィンヤーズの研修生として醸造を経験。