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連載コラム Vol.36
2005 ハーヴェスト・レポート No.1
  Written by 立花 峰夫  
 
 2005年のハーヴェストは、9月3日に始まった。例年と同じく、パソ・ロブレスのジンファンデルからの幕開である。他の品種についてはぐっと遅く、モンテベロのシャルドネが9月30日、メルロが10月3日、カベルネが10月8日の開始である。このコラムを執筆している10月10時点で、ジンファンデルとシャルドネはほぼ完了、これからはカベルネの山が予定されている。9月3日の開始日自体は決して早いものではないが、その後「待ち」の期間が挟まったこともあり、全体的にはやや遅めに進行する年となっている(ジンファンデルについても、本格的な収穫は9月19日以降)。
 今年は、「ユニークな気候」だと皆が話しているという。春先に雨が多く、8月の後半から9月前半に霧や低温が続くという、カリフォルニアらしくない天候となった。モンテベロ・ワイナリーのプロダクション・マネージャー、エリック・バウアーは、気象衛星から撮影された天候写真を毎日ノートに張り、気象予報士ばりにその後の推移を予測しながら収穫の計画を立てている。
 ただし、この低温も品質上必ずしもマイナスではない。リットン・スプリングス・ワイナリーのプロダクション・マネージャーであるジョン・オルニーは、「(この低温が)ジンファンデルの成熟の最終段階を引き延ばしてくれた。そのせいで糖度が低めで酸の高い葡萄が得られているが、それでもフレーバーが熟することはできている」と、述べている。これから本格的に収穫が始まるカベルネについても、9月末に数日続いた暑い日によって成熟が進み、期待の持てる状態になってきた。
 エリック・バウアーも、ジンファンデルの品質には楽観的だ。「今年の品質は、97年や99年と同じぐらい偉大になるポテンシャルがある。非常に深い色、リッチだが柔らかなタンニン、溢れんばかりの果実味、理想的な酸味がワインには観察される」と、9月23日の時点でコメントしている。
 収量については、ここ数年の中では多めになりそうだというが(ただし大豊作であった1997年ほどではない)、品質上の影響はない。葡萄のコンディションという点では、開花〜結実期の低温のために小粒の果粒が目立つというが、こちらも品質上はむしろプラスであろう。
 次回は、モンテベロの収穫の模様についてお知らせする。
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 立花 峰夫
 フリーのワインライター/翻訳者。
 2003年ヴィンテージには、リッジ・ヴィンヤーズの研修生として醸造を経験。