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連載コラム Vol.33
ジンファンデルの栽培について その5
  アメリカ醸造栽培学会におけるデヴィッド・ゲイツの講演より(1997年6月30日)  
 
植樹間隔:ガイザーヴィルの畑では、樹間1.8メートル×畝間2.7メートルの植樹間隔で若木を植え付けていて、8列ごとに幅3.6メートルの小道を設けて、収穫時にトラクターが入れるようにしてあります。古木については樹間1.2メートル×畝間3.6メートルから、樹間2.4メートル×畝間3.6メートルまでさまざまです。リットン・スプリングスの畑では、古木はすべて樹間2.4メートル×畝間2.4メートルになっています。一方新しく植え付けた樹のほうは、すべて樹間1.8メートル×畝間2.4メートルで、1.5メートルの支柱が105センチ分地上に出るように立てられています。いまだに私たちは牛乳パックを新植の樹に被せていて、というのも牛乳パックよりも長い成長保護チューブを使うと、私たちが採用するゴブレ仕立てでは新梢の節間が長くなりすぎるからです。加えて、牛乳パックはウサギやその他のげっ歯類の動物からも、樹を守ってくれます。
灌漑:新しく植えた樹にはすべてドリップ式灌漑の設備を設けていますし、古木のジンファンデルの畑についてもつい最近、同じ設備の導入が完了したところです。これで、収穫後にしっかりと灌漑を行うことができるようになり、葡萄樹の健康維持にプラスとなっています。また、灌漑設備があれば、生育期間中に干ばつが起きた時にも葡萄に水を与えられるようになります。リットン・イーストの畑では、古木の列の中に若木を挟んでいっており、これは枯死してしまった樹の代わりに植えられているものです。灌漑を必要とするのは若木だけでして、成木になればその必要はなくなります。これからは、すべての樹にエミッター(注:灌漑チューブに取り付ける小さなノズルのような装置で、水の流出量を調整する)を設置していく予定で、完成までにはおそらく10年ほどかかるでしょう。この方法を使えば、古木が植わるブロックにおいて、風味の強烈さを損なうことなく生産量を増やせるのではないかと期待しています。
収穫:通常私たちは、パソ・ロブレスのジンファンデルを8月下旬に、リットン・スプリングスとガイザーヴィルを9月上旬から中旬に、ソノマ・ヴァレー、ヨーク・クリーク、サンタ・クルーズ・マウンテンズを9月下旬から10月中旬に収穫しています。酸度と糖度も頻繁にチェックしますが、第一の判断基準は味わいです。葡萄の風味が十分に発達しているかどうかを推し量る上で、一番大事なのはやはり味なのです。ジンファンデルに関しては、完全に収穫準備が出来たと確信できるまで、摘み取りを待つようにしています。はっきりと確信がないまま摘んでしまった区画は、いつでもがっかりするようなワインとなったからです。かすかに残る青臭い風味が消えて、熟したジャムのような果実風味が口に満ちるようになる時点が葡萄にはあるのですが、ジンファンデルの場合、通常糖度が24度かそれ以上になった時にこの瞬間が訪れます。理想的な葡萄の熟度がこの水準ですから、出来上がったワインは比較的アルコールが高くなりますし、葡萄が過熟になってしまうリスクもあります。しかし、待つことによって上積みされる高い品質を考えれば、このリスクは背負えるものだと考えています。ジンファンデルのように、非常に高い糖度でもみずみずしい果実味を保てる品種は、他にないように思われます。
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 デヴィッド・ゲイツ
 リッジ・ヴィンヤーズ副社長、栽培責任者