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連載コラム Vol.32
ジンファンデルの栽培について その4
  アメリカ醸造栽培学会におけるデヴィッド・ゲイツの講演より(1997年6月30日)  
 
 病虫害管理:ハダニはジンファンデルの畑において、よくある問題だと言えましょう。実際、ウィラメット種のハダニは、ほかの品種よりもジンファンデルを好むようなのです。ジンファンデルの、大ぶりで産毛が多少生えた葉は、ハダニの生育に最適であります。特に、樹勢が低いか中庸で、灌漑なしで栽培されており(樹にストレスがかかっており)、1996年や1994年のように暑い年だと繁殖しやすいでしょう。私たちの畑では、こうしたハダニを補食する別種のダニを畑に放っており、ハダニの駆除に殺虫剤をまくのは稀なことです。私にとって第一の方針は、ハダニの問題と共存していくことでして、爆発的増加をもたらす要素を緩和するようにしてやるのです(例えば、畑に土ぼこりがたたないようにするなど)。ヨコバイには殺虫剤は使いません。ヨコバイは、地域によってはピアス病を媒介する昆虫ではあるのですが。
 灰色カビ病は、ジンファンデルに深刻な被害を与えることがあります。ジンファンデルの房は大きく、粒が密着していて、粒自体も大きく皮が薄いからです。結実のあと、房周りの葉を取り除き、八月下旬の色づき(ヴェレゾン)の頃には房の間引きもしているのですが、これは秋の雨が降り出す前に、葡萄が完熟する可能性を最大にしたいからです。大雑把な経験則として、ジンファンデルの樹齢が高くなるほど、果実がバラ房(果粒があまり密着していない房)となり、成熟速度も早くなります。ジンファンデルをゴブレ剪定にするメリットと思われるものに、果粒が小さくなり、カビ害が生じにくくなるというものがあります。房に発生するカビに対して、我々が防カビ剤を用いることはありません。
収量:どのジンファンデルの畑でも、ヴェレゾンの時期に房の間引きをしています。ヴェレゾン時点で摘房をしたほうが、もっと早い時期に摘房したり、冬に強く剪定したりするのと比べて、果粒の小さいバラ房の果実となります。間引きは簡単な作業ですし、必要な樹だけしてやればいいのです。若木なら最大で半分、古木なら最大で四分の一ほどを落とします。こうした摘房は(収量が減るため)相対的にコストを引き上げますし、作柄の見極めを誤ることもあります。つまり、必要以上に間引きをしてしまう年があるということです。好例なのが1995年で、生育期間の開始が随分遅く、初春に雨が降り、夏も涼しかった年でした。冬が早く来るのではないか、(晩秋から始まる)雨期に入るのも早いのではないかと考えて、かなり大量に房を落としたのですが、結局は信じられないほどの好天で気温も高い秋がやってきて、それが10月まで続いたのです。地面に落としてしまった分の房も、やすやすと成熟させることができたでしょうに。
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 デヴィッド・ゲイツ
 リッジ・ヴィンヤーズ副社長、栽培責任者