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連載コラム Vol.28
リッジのラベルデザイン
  Written by 立花 峰夫  
 
 このほど、イギリスのワイン雑誌Decanterに、ワインのラベルデザインに関する記事が掲載された(2005年5月号)。その記事の中に、イギリスの有名建築デザイナーが、新旧世界の様々なワインラベルを評価するというコーナーがあった。リッジのモンテベロ 2001のラベルもそこで取り上げられており、全般に辛口の評者から、以下のような最大級の賛辞を勝ち得ている。
『このワインの素晴らしい名声は耳にしているし、厳格なラベルデザインもかなり好ましいように感じる。飾り気のない威厳のようなものが感じられ、まことエレガントに目に映る。仮にこのワインの評判を知らなかったとしても、同じような印象を持つのではないかと思う』
 リッジのラベルデザインは、1962年の初ヴィンテージ以来ずっと変わっていない。文字の大きさなどには微妙な変遷があるが、基本的なデザインは同一である。デザインを担当したのは故ジム・ロビンソンというデザイナーで、当時ドイツで新しく開発されたばかりだった、オプティマ Optimaというフォントを採用した。このフォントを商業デザインに用いたのは、アメリカではリッジが初めてだったらしい。
 ラベルとはいうまでもなくワインの「顔」であり、我々が思っている以上に売上げやイメージに影響を与えている。その点において、リッジのラベルデザインは大成功だったように思う。40年という時の試練を経た今でもまったく古びていないし、何よりも素晴らしいと思うのは、先のデザイナー氏も指摘しているように、ワイナリーとしてのポリシーやイメージが、そこに反映されているように思うからだ。
 筆者がリッジのラベルデザインから受け取る印象は、合理主義的先進性、シンプルな美への志向、厳格さといったものだ。リッジの創設者たち(スタンフォード大学の科学者グループ)が持っていた理想が、そこには映し出されている。その後、1969年に参画した総帥ポール・ドレーパーへと理想は受け継がれた。
似たようなデザインのラベルがない、というのも大きなメリットである。リッジのワインの数々は、品質の高さとともにそのユニークなスタイルがウリなのだ。オプティマの文字だけで構成されたラベルデザインはまた、独自性が重要であることを強く訴えている。
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 立花 峰夫
 フリーのワインライター/翻訳者。
 2003年ヴィンテージには、リッジ・ヴィンヤーズの研修生として醸造を経験。