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連載コラム Vol.26
モンテベロのテロワール その3 土壌(物理的組成)
  Written by 立花 峰夫  
 
  土壌の物理的組成とは、どのぐらいの大きさの粒子がどの程度含まれていて(土性)、それがどういった形で結びついているか(構造)を指しており、それは土壌の水はけ、保水性、通気性、根の伸長性に影響をおよぼす。優れた土壌とは一般に、孔隙があって水はけ、通気性、根の伸長性に優れていて、同時に水はけも良いというものである。
 モンテベロの土性は埴壌土(clay loam)で、これは大多数がシルトと粘土という比較的重めの土壌(粒子の直径が小さい)である。重い土壌は水分や栄養分の保持力には優れるものの、孔隙率が低くなりがちで、水はけや通気の面では不利になりやすい。しかし、重めの土壌であっても、カルシウムと有機物を適度に含んでいると、土が崩れやすくなるためにこうした問題は生じない。石灰岩土壌には、その粘土に母岩からもたらされた豊富なカルシウムが含まれており、その土性は葡萄栽培に最適なものとなる。
 構造の面でもモンテベロの土は優れている。優れた保水性と通気、水はけを同時に達成する団粒構造が表土に見られるだけでなく、母岩そのものが優れた保水性と水はけを併せ持っている。モンテベロでは母岩をも根が貫通しているため、岩の組成も考慮に入れる必要があるのだ。
 まず、モンテベロの石灰岩は保水性に優れる。カリフォルニアでは夏場に雨がまったく降らないが、暑さの厳しい盛夏にあっても石灰岩は冬場に降った雨をその内部に蓄えていて、葡萄樹は一定の水分供給を受けられる。葡萄栽培には灌漑が欠かせないカリフォルニアにあるにも関わらず、モンテベロの葡萄はほとんどがドライ・ファーム(灌漑なしの栽培)なのだが、その秘密はこの石灰岩の保水性にある。
 水はけは保水性の良さとは一見矛盾する要素だが、モンテベロの石灰岩の場合、岩に含まれる無数の亀裂が水はけの良さをも保証している。水はけは、土壌が葡萄樹に与える影響の中で最も重要な要素であり、収穫期だけではなく、生育期間を通じて良好でなければならない(水浸しの状態だと根が死んでしまい、栄養摂取不良を引き起こす)。
 以上から、モンテベロの土壌および母岩は、物理的組成の面で葡萄栽培に理想的なものだとわかった。次回は、その化学的組成にスポットを当ててみよう。
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 立花 峰夫
 フリーのワインライター/翻訳者。
 2003年ヴィンテージには、リッジ・ヴィンヤーズの研修生として醸造を経験。