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連載コラム Vol.25
モンテベロのテロワール その2 土壌(概略)
  Written by 立花 峰夫  
 
  土壌はワインに影響を与えるが、品種や気候といったファクターと比べると、その程度はずいぶん小さいと今日では考えられている。実際、カベルネ・ソーヴィニョンという品種に限っても、相当に幅広い種類の土壌から卓越したワインが生まれており、決定的な影響力を持つ特定の土壌タイプというものは存在していない。とはいえ、モンテベロの土壌がその気候と同様にユニークなのは事実であり、ワインの質とスタイルへの貢献は無視できないものである。
 モンテベロの土壌は、カリフォルニアではかなり珍しい石灰質の土壌である。石灰質土壌とは炭酸カルシウムを多く含むものであり、それは地中の母岩が石灰岩(あるいは泥灰岩)であることを示している。モンテベロにある石灰岩は、約一億年前に赤道近くで形成されたものが、太平洋プレートの北上とともに移動してきたもの。同様の母岩があるのは、カリフォルニア沿岸地帯では、他に数カ所しかない。
 土壌とは、表土と母岩の間にある土の層のことを指すが、これは母岩がどんな種類の岩石であるかに影響を受けている。モンテベロの地中には、上記の石灰岩のほかにフランシスカン・レッド・ロックという赤茶色の柔らかい岩も存在しており、二種類の岩が斜めに重なり合ったような地層が典型的である。その表土は、この二種の岩が風化してできた粒子が混ざり合ったもので、土壌学における土性分類では埴壌土(clay loam)に位置づけられる。
 山の斜面に開かれた畑であるため、表土は薄く15〜60センチほどしかない。表土が薄いと、葡萄の根が浅くしか張らないのが問題だと指摘されることがあるが、モンテベロの場合はそれにあたらない。サン・アンドレアス断層上に位置し、活発な地震活動を経てきたモンテベロの母岩には無数の亀裂が入っており、葡萄の根はその亀裂に沿って地中深くまで伸びることができる。地中6メートルまで根を伸ばしている葡萄樹が、かつて植え替えの際に見つかったこともあるという。
 こうした概略を踏まえた上で、実際にどのような点でモンテベロの土壌が優れているかを見ていこう。土壌の性質には、大きく分けて物理的組成と化学的組成がある。次回にはまず物理的組成の観点から、モンテベロの特異性・優位性を確認する。
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 立花 峰夫
 フリーのワインライター/翻訳者。
 2003年ヴィンテージには、リッジ・ヴィンヤーズの研修生として醸造を経験。