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連載コラム Vol.212

最近のリッジの紹介記事 デカンター 2013年3月号

  Written by 立花 峰夫  
 
  2013年3月、リッジについて深く紹介する秀逸な記事が、米英の主力ワインメディアにそれぞれ掲載された。
 一つ目は、英国を代表する権威あるワイン専門誌『Decanter デカンター』の記事。この雑誌は、ワイン業界で大きな功績のあった人物を称える賞「マン・オブ・ザ・イヤー」でも広く知られており、リッジの総帥ポール・ドレーパーも2000年にこの賞を受けている。今回リッジが取り上げられたのは、「Decanter Wine Legends(デカンターが選ぶ伝説のワイン)」という連載記事である。いわゆる「死ぬまでに一度は飲んでみたい」愛好家垂涎のワインについて、バックグラウンドを深く紹介するという内容の記事で、過去に取り上げられたワインにはムートン1945年、シュヴァル・ブラン1947年、イケム1921年、DRCリシュブール1959年など錚々たる顔ぶれが並ぶ。
  そこにリッジのモンテベロが加わったのだが、意外だったのは「パリスの審判」で最終勝者に輝いた1971年ヴィンテージではなく、1970年が選ばれたことであろう。その理由は、両年のワインを仕込んだポール・ドレーパー自身が、常に1970年のほうを好んできたというもの。Decanter誌によるマン・オブ・ザ・イヤー受賞を称えるディナーでも、ドレーパーが饗したのは1970年のモンテベロだったそうだ。ポール・ドレーパーがリッジに参画したのは1969年だが、最初からすべてを手がけた実質的な初ヴィンテージは1970年だから、その感慨も手伝ってのチョイスなのかも知れない。
  記事中では、リッジ黎明期の歴史紹介、テロワール、醸造方法、ヴィンテージが解説されたあと、最後に有力ワイン評論家たちによる1970年の試飲コメントが紹介されている(以下引用)。

  アメリカ人ワイン評論家のジェームズ・ローブは、1970年ヴィンテージを絶賛している。「1970年代で最上のモンテベロ。しなやかで複雑、調和の取れたワインで、スグリ、アニス、オーク由来の杉、土を感じさせるミネラル風味が層を成している」。「ドクター・ヴィーノ」として知られるタイラー・コールマンは、2010年に次のコメントを発表した。「伝説の1970年は…素晴らしい状態である。熟成しているが、まだまだしっかり生きている」。同じ年にコメントを発表したマイク・シュタインバーガーも、同じぐらい熱狂的だ。「なめし皮、カシス、タバコを思わせるセンセーショナルなブーケ。豊潤かつ温かみのあるワインで、驚くほどの風味の深さ、バターのように滑らかなタンニンがあって、メンソールのニュアンスが素晴らしいアクセントとなっている。卓越したワインで、いまだ生命力に満ち溢れている」(引用終わり)

  1970年のモンテベロは、生産本数わずか5,544本。自社畑がまだ小さかった時代なので、今よりもずいぶん少ない本数である(品種も、1970年はカベルネ・ソーヴィニョン100%)。発売から40年が経過した今、未開栓のボトルはいったい世界に何本残っているのだろうか。発売当初はたった10ドルだったこのワイン、今では値段が付けられないほどの価値になっている。

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