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連載コラム Vol.207

いにしえの植樹パターン解読 その2

  Written by デイヴィッド・アマディア  
 
 (前回からの続き)

 地図上に示されているこのパターンは、なぜ不完全なのだろうか(地図上で、赤色の丸がところどころ欠けている)。グラン・ノワールという品種は、ジンファンデルと比べて若干丈夫さの点で劣っているようだから、長年の間に少しずつ植え替えられてしまったのだろう。リットン東部の畑では、今から約40年前に大規模な改植が行われている。その際に枯死していた樹、すでに抜かれていた樹は、ジンファンデルに置き替えられたのだ。

 今回のブドウの畑の調査では、パロミノやブルジェといった白ブドウ品種、少量のシラーが見つかったほか、かなりの数(124本)のマタロ(ムールヴェドル)が、ノース・フラット3という区画に集中的に植わっていることもわかった。ウィルによれば、ジンファンデルとペティト・シラーは、葉の形で簡単に見分けがつくらしい。カリニャンは、枝がまっすぐ旺盛に伸びる性質から特定可能で、グラン・ノワールとアリカンテは果肉が赤いことが決め手となる。とはいえ、まだ品種が特定されていない樹もいくらか残っている。20本余りだけだが、標準的なブドウ分類学の手法で品種が特定できなかった樹が、地図上にクエスチョンマークで印されている。今年(2012年)の後半に、この不明の樹については再調査が行われる予定だ。

 こうした一世紀以上の歴史を持つ黒品種混植の畑(私たちが「オールド・パッチス」(古い区画)と呼ぶもの)は、カリフォルニアの宝である。同じような品種構成での混植は、世界中探しても他にないのだから。「オールド・パッチス」は、リッジが造る多数のワインにおいて、品質と個性につながるキーポイントになっている。リットン・スプリングス、ガイザーヴィル、パガニ・ランチなどがその例だ。複数品種が混ざった区画から生まれたワインは複雑で、一種類の品種だけを植えた畑のワインをはるかに上回ると、私たちは確信を持っている。そんなわけで、過去10年間にわたってリットン・スプリングスおよびガイザーヴィルの畑では、新たに黒品種混植の植え付けを行ってきているのだ。この新しい区画は、愛情を込めて「ニュー・パッチス」と呼ばれている。

 ウィルは、リットン東部の畑の黒品種混植区画のうち、まだ三分の一しか調べられていない(訳注:2012年夏の時点)。彼は残り9,000本の樹についても引き続き調査・地図化を続け、2012年の収穫が終わるまでには完了したいと考えている(訳注: 2012年中に調査は完了)。もし、新たな「いにしえのパターン」が見つかったら、必ず皆様にお知らせするのでご心配なきよう!


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リットン東部「黒品種混植」区画(1901年植樹)の品種マップ
リットン東部「黒品種混植」区画(1901年植樹)の品種マップ
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デイヴィッド・アマディア
 リッジ・ヴィンヤーズ 販売・マーケティング部門副社長