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連載コラム Vol.205

ニューヨーク・タイムズの記事(リットン・スプリングス 2010について)

  Written by 立花 峰夫  
 
 アメリカきっての高級紙、ニューヨーク・タイムズでワインコラムを連載しているエリック・アシモフが、昨年12月にジンファンデルのテイスティングを行った。トップを取ったのは、リットン・スプリングスの2010年ヴィンテージ。ほうぼうで評判のいいリットンの2010、またもやの快挙である。

 エリック・アシモフは、ロバート・パーカーを除けば「アメリカ東海岸で一番影響力のあるワイン評論家」と言ってもいい人物だ。彼は、「アルコールの低い、エレガントなワインが大好き」というはっきりした味の好みを持っている。そんなわけで、アシモフが企画したテイスティングは、「精妙でアルコールが比較的低い(15%未満)ジンファンデルのみを、20銘柄集めて比較試飲する」という、独特のテーマを持ったものになった。

 記事のはじめにアシモフは、次のように書いている。「長年、ジンファンデルとは折り合いの悪い状態が続いていた。好きになってあげたいとは思っている。実際、1980年代から90年代前半までは大好きだったのだ。だがその後、すっかり飲むのを止めてしまった。……端的に言って、ジンファンデルが大柄に、しばしば巨大に、時には怪物的なサイズのワインになってしまったからだ。途方もなくパワフルなワインが好みの人々は、大喜びしているのだが、私はそうではない。……」

 リッジのワイン造りの方向性は、アシモフのこうした嗜好にぴったりマッチしている。今回の結果について、アシモフ自身が「一位に選んだワインは、意外な銘柄ではない」と記しているぐらいだ。彼のコメントは次のように続く。「リッジはソノマ郡にある古木の畑から、偉大なジンファンデルを造り続けており、ドライ・クリーク・ヴァレーの畑、リットン・スプリングスの2010もそのひとつである。14.4%のアルコール。ずっしりとした重量感はあるものの、美しい骨格を備え、精妙なニュアンスを持つ飲み疲れしないワインである」

 なお、ガイザーヴィルの2010は第七位。「多くの点でガイザーヴィルはリットン・スプリングスと似ていたのだが、様々なパーツの調和度合いの点で一歩及ばなかった。味がまとまるのに、もう少し時間が必要なのだろう」と、アシモフはコメントしている。こちらは将来に期待である。



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