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連載コラム Vol.204

ヒストリック・ヴィンヤーズ・ソサエティ その2

  Written by デイヴィッド・ゲイツ  
 
 (前回からの続き) 最初に行った仕事こそが一番議論を呼ぶものであり、というのも「ヒストリック・ヴィンヤーズ」(歴史的ブドウ畑)の基準を定義しようとしたからだ。ずいぶんと時間をかけて議論した末に(もちろんワインの試飲も行った)、樹齢50年からを「古木」と呼ぶのが妥当な定義だろうという結論に至った。これは、今日のカリフォルニアにおけるブドウ樹の平均寿命からすると、おおむね二倍半の値である。高い樹齢は、その畑とそこから生まれるワインに備わる高い品質を裏付けるものであり、素晴らしい樹々の世話をしてきた人々を賞賛するものでもある。我々の定義する「ヒストリック・ヴィンヤーズ」の条件は、樹齢だけではない。現存する樹の少なくとも3分の1がその畑が拓かれたときに植えられたもので、かつ未だに実をつけていることも必要とされる。どんな畑でも、毎年いくらかの樹が失われていくものだ。原因は害虫、病気によるものであったり、トラクターや車によってなぎ倒されてしまったりなど様々である。栽培責任者は、そのようにして失われた樹を必要に応じて植え替える。1890年代に拓かれたブドウ畑では、植え替えられた樹でも80年の年齢に達していることがあるのだ!

 ヒストリック・ヴィンヤーズ・ソサエティは現在、自分の畑を認定してほしいというブドウ栽培家やワイナリーからの、申し込みを整理する作業を進めている。作成中の登録リストは、広範だが入念な精査を受けたものである。リストに掲載される情報は、ブドウ品種、土壌タイプ、位置、植樹時期、最初に樹を植えた人物の名前、現在までに生産されてきたワインの銘柄名、果実およびワインの性質など。ヒストリック・ヴィンヤーズ・ソサエティでは、この登録リストが多くの目的で活用されることを願っている。その中にはもちろん、ワイン愛好家がリスト掲載の畑から生まれた、偉大なワインを発見するよすがとなることも含まれるだろう。突き詰めればそうした発見こそが、貴重なブドウ畑という資源を未来に伝える最良の方法かもしれない。



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  デイヴィッド・ゲイツ
リッジ・ヴィンヤーズ 栽培担当副社長