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連載コラム Vol.202

ジンファンデルは偉大なワインか? その2

  Written by デヴィッド・アマディア  
 
 イギリスのワインライターで、世界で最も影響力のあるワイン評論家でもあるジャンシス・ロビンソンは、かつて『ヴィンテージ・タイム・チャーツ Vintage Time Charts』という本を著した。この書物は、世界中から最高のワイン46銘柄を選び、その熟成の道筋を追いかけたものである。リッジのガイザーヴィル・ジンファンデルを、1970ヴィンテージまで遡って試飲した彼女は、シャトー・マルゴー、ペトリュスといったワインとともにガイザーヴィルをその本に収録してくれた。ロビンソンはまた、カリフォルニアのヒストリック・ヴィンヤーズ・ソサエティ(歴史的ブドウ畑保存協会)の創設メンバーにもなっている。ソサエティの登録リストには、樹齢50年〜130年までのカリフォルニアのブドウ畑が掲載されているのだが、そのうちの90%以上がジンファンデルの畑である。他の品種の畑は、二度の大戦、禁酒法、大恐慌の時代に打ち捨てられてしまったのだが、ジンファンデルは生き残った。ジンファンデルの畑が残ったのは、そこから生まれるワインの品質が高く、訴求力があったからに他ならない。

 リッジにおける私の前任者、万人に愛されたドン・リーセンはよくこう言っていた。「ジンファンデルは、いつまでも王に即位することのない王子なのだ」と。フランス中心主義の世界観の中で、ジンファンデルが不当に低い評価を受けているという含意がここにはある。フランスの高名な産地で栽培されている品種だけしか、アメリカ合衆国では本格的なワインだと見なされない。カリフォルニアのワイン産業はいつだってフランスを基準にしてきたのだ。フランスを代表する偉大な赤ワイン(拡大解釈するなら、「世界を代表する偉大な赤ワイン」)と言えば、ボルドー産とブルゴーニュ産、すなわちカベルネ・ソーヴィニョンとピノ・ノワールである。

 1930年代後半および禁酒法以前のカリフォルニアで造られていたジンファンデルの中には、信じがたいほど素晴らしいものもあった。その後はといえば、1960年代に入ってからようやく、ジンファンデルから偉大なワインを産み出そうという造り手が現れている。フランス人が偉大なカベルネやピノを産み出そうと何百年にわたって心血を注いできたことを考えれば、これはほんの一瞬の間に過ぎない。

 ジンファンデルの消費者には気取ったところがない。好きだから飲むのであって、友人たちにいいところを見せたいわけではないのだ。だからといって、本格的なワインだと認められる可能性が消えるわけではなかろう。リッジのジンファンデルは、(前回のコラムで紹介した)パーカーによる偉大なワインの基準を満たしている。私が追加した基準についてもだ。リッジの他にも、偉大なジンファンデルを生産している造り手はカリフォルニアに多くいる。「偉大」の範疇に含まれるであろうジンファンデルの割合は、過去50年で着実に増加してきた。カリフォルニアで生産される偉大なカベルネや、偉大なピノの割合と比べても、今やひけを取らない。カリフォルニア産のカベルネやピノばかり好む消費者が、リットン・スプリングスやガイザーヴィルの入ったグラスを手に、「こいつは偉大なワインだ!」とコメントする時代は、もう到来している。



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 デヴィッド・アマディア
 リッジ・ヴィンヤーズ 販売・マーケティング部門副社長