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連載コラム Vol.191

シャルドネの生産量について

  Written by 立花 峰夫  
 
 リッジでは現在、「シャルドネ・エステート」と「シャルドネ・モンテベロ」という二銘柄のシャルドネを生産している。いずれもモンテベロの自社畑に植わるブドウを使ったワインで、リッジが造っている白ワインはこれらのシャルドネだけである。冷涼な気候を反映し、酸とミネラルのきいた硬質なスタイルだが、アメリカンオーク樽での熟成に由来するグラマラスな風味も備えている。赤も勿論すばらしいのだが、リッジのシャルドネのファンは世界中に数多くおり、私もその一人である。しかしその生産量は、全体の5%にも満たず、どこでもすぐに売り切れ状態になってしまう。なんとかして、生産量が増えてくれないものか。

 現在リッジのシャルドネは、モンテベロの自社畑の中では最も標高の低い(それでも400mはある)、クラインの畑の中にある三つの区画に植わっている。面積は三区画合計で6.8ヘクタール。ただし、クラインの少し上にある新しい畑、ルーステンにも2ヘクタールほどのシャルドネが新植されており(以下写真)、この畑からの果実が使えるようになると、多少生産量が増えるかと期待していた。しかし、ルーステンの畑で増えた分を相殺するように、現在のクラインの畑に植わるシャルドネの一部を引き抜いて植え替えをする計画があるらしく、生産量のアップは当分望めそうにない。



 シャルドネの生産量アップが見込めないのは、ほかにも理由がある。ワイナリー内のスペースの問題だ。シャルドネはすべて、モンテベロ・ワイナリーで仕込まれているが、その樽発酵・樽熟成用のスペースはすでにいっぱいいっぱい。敷地内で新たに建て増しをする余地もほとんどない。原料果実だけの問題ならば、ジンファンデルのように優れた栽培家の育てたブドウを購入して仕込むという手も考えられるが、スペースの問題はいかんともしがたい。

 先日ワイナリーを訪問した際、モンテベロ・シャルドネのバックヴィンテージをいくつか試飲した。若いうちから美味しいワインであるが、数年経過してまろやかな甘味が出てきたボトルの魅力は筆舌に尽くしがたい。ただ、生産量が絶対的に少ないがため、十分熟成したリッジのシャルドネを市場で見かけることはほとんどない。発売直後に買えるだけ買い、飲みたい気持ちを我慢してじっと自分で熟成させるほかないようだ。

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 立花 峰夫
 フリーのワインライター/翻訳者。
 2003年ヴィンテージには、リッジ・ヴィンヤーズの研修生
  として醸造を経験。