Archives
連載コラム Vol.188

モンテベロのアッセンブリッジ 2011 その4

  Written by 立花 峰夫  
 
  引き続き、去る2月上旬に行われたモンテベロ赤2011のブレンド(第一アッセンブリッジ)についてお伝えする。書き手は、リッジのオフィシャル・ブログの執筆者であるクリストファー・ワトキンス(リッジ小売部門マネージャー)である。

***********************************

  ここでまた、問題がひとつ起きた。ジョン・オルニーが、リットン・スプリングスへと戻らねばならない時間になったのである。瓶詰めラインの改良に立ちあうためだ。テイスターの数が8人になったということで、同じ得票数で決着がつかないことが起こりえる。幸い、第5フライトでは6対2と大差がつき、またもや新しいロットを加えたほうに軍配があがった。4.4%のカベルネ・フランが足されたのである。ゾクゾクした。



  だが、同点という避けられない結果が第6フライトで起きた。16のロットがブレンドされたコントロールに4人、さらにもう1ロット加えたものに同じく4人が投票したのである。ハラハラさせられる展開。醸造家チームは全員が1ロット加えたものを支持した(ポール・ドレーパー、エリック・ボーハー、シュン・イシクボ、シンジ・クロカワ)。一方、栽培チーム(デヴィッド・ゲイツ、ウィル・トーマス、カイル・セリオット)は一致団結してコントロール支持に回った(私もこちらの陣営である)。結局、栽培家チームがこのフライトでは引きさがり、1ロットが加えられて17ロットとなった。





  第8フライトが最終ラウンドとなった。またもや同点、4対4である。さあ、どうしたものか。今回はコントロールが最終的に支持され、17ロットのブレンドがそのまま残った。これが、2011モンテベロの「公式な」第一アッセンブリッジとなったのだ。





  このワインを評して、ポールは「満足いくもの」という言葉を使った(そのすぐあと、彼は今までワインを語るときに、この言葉を使ったことがないと述べた)。ともあれ、言う通りだった。ワインは実に満足のいく仕上がりだったのだから。





  だが、最後にまだ大変なテイスティングが残されていた。新しく生まれた2011年の第一アッセンブリッジと、過去3ヴィンテージのモンテベロを比べる「ブラインド・テイスティング」である。比較対象となったのは2010(樽抜きサンプル)、2009(未発売だが瓶詰めは済)、2008(発売中の現行ヴィンテージ)の三つ。これは、我々が皆揃って視野狭窄に陥り、狭い視点でワインを判断するという致命的なミスを犯していないか、味の隘路に迷い込んでいないか、2011年だけの世界に入り込んでしまっていないかを確認するためであった。他に目がいかず、自己満足に陥り、モンテベロの歴史から外れていないかどうかを確認するために。

Archives
 立花 峰夫
 フリーのワインライター/翻訳者。
 2003年ヴィンテージには、リッジ・ヴィンヤーズの研修生
  として醸造を経験。