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連載コラム Vol.187

モンテベロのアッセンブリッジ 2011 その3

  Written by 立花 峰夫  
 
 引き続き、去る2月上旬に行われたモンテベロ赤2011のブレンド(第一アッセンブリッジ)についてお伝えする。書き手は、リッジのオフィシャル・ブログの執筆者であるクリストファー・ワトキンス(リッジ小売部門マネージャー)である。

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 最初のフライトが終わったあと、この日はいつもとは違う成り行きになりそうだとわかった。9人のテイスターのうち、7人がコントロール(新たなロットが加わっていないもの)を好んだのだ。だが、残る2人のテイスターは、ポール・ドレーパーとエリック・ボーハーだった! 難問が持ち上がったというわけだ。二人は、「醸造責任者の拒否権」を発動するのだろうか?



  二人は拒否権発動に踏み切らず、コントロールが支持された結果は覆らなかった。フライト2が始まったが、またもや7対2の評決に。多数の支持を得たのがコントロールのほうだというのも同じ。フライトが二つ終わったが、まだ新しいロットは加わっていない。ただし、今度は三人いる醸造責任者の意見が一致した。ポール、エリック、ジョン・オルニーの全員が、コントロールを支持したのである。   フライト3の結果は、またもや7対2の評決だった! こんなことは前例がない。今回については、ジョンとエリックが、新しいロットを加えたワインを共に支持したが、ポールはコントロールのほうを好んだ。新しいロットを加えたワインのほうが7票を獲得していたから、ポールは少数派ということになる。さてどうなる? ポールは拒否権を発動するのか?   結果はノー。拒否権の発動はなかった。代わりに彼は、自分たちがその時試飲していたワインの物凄いスケールについて、時間をとってコメントをした。投票の内訳、すなわち誰がどっちを支持するかが絶え間なく変化するのは、二種類のワインを区別するのが、単に極めて困難だからに過ぎない。実際、どれも美味なのだ。個人的に言えば、これまでの中ではフライト3が、好みを選ぶのが一番難しかった。最終的には、新しいロットを加えたほうに投票し、多数派に与することになった。フライト3の結果、新しいロットがひとつコントロールに加えられ、コントロールを構成するロットは全部で14になった。





  フライト4は、今までと違った結果となった。評決は僅差となり、すなわち5対4だったのだ。このフライトでは、ジョンとポールが同じ陣営で、エリックが孤立する形になった。5人がコントロールを支持し、エリックを含む4人が新しいロットを加えたワインを支持した。ところが長い議論のあと、テーブルについていた全員が、新しいロットを加えたほうを支持することに宗旨替えした。当初の支持は、4票だけだったにも関わらずだ。率直に言って、我々は興奮の最中にあり、新しい区画を加えるという方向性に抗いがたかったのである。





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 立花 峰夫
 フリーのワインライター/翻訳者。
 2003年ヴィンテージには、リッジ・ヴィンヤーズの研修生
  として醸造を経験。