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連載コラム Vol.183

ポール・ドレーパーへの10の質問 その5

  Written by 立花 峰夫  
 
 リッジ・ヴィンヤーズの総裁ポール・ドレーパーに向けられた、10のQ&A、いよいよ最終回である。質問者は、ブラジルにおけるリッジの正規輸入代理店ミストラル社のRodrigo Mainardi 氏。原文はリッジの公式ブログに2011年8月に掲載された。


<質問9>
 あなたは偉大なワインを40年以上造り続けている。キャリアの始めから今までのうちで、アプローチ面で変化したことはあるか?

<回答9>
 天然酵母でのアルコール発酵、天然乳酸菌でのマロラクティック発酵、優しい取り扱い、フリーの亜硫酸を最小限にすること、亜硫酸以外の添加物を使わず、機械的加工をしないことといった基本的なアプローチはほとんど変わっていない。しかしながら長年にわたる経験の中で、最高の形で葡萄を植え、畑を管理する方法を学んできたので、毎年安定して卓越した果実を得ることができるようになってきた。ワイナリーでもほぼ毎年、品質を付加的に向上させる何らかの手法を新たに手に入れており、たとえばプレスワインを二つではなく五つに分割すること、優れた機構を持つ選果台を導入することなどだ。


<質問10>
 世界のどこか別の場所で、ワインを造ることを計画したことはあるか。その理由とともに教えてほしい。

<回答10>
 60年代の半ば、リッジに参画する以前の話だが、私はチリにある古いワイナリーを再建したことがある。コンセプションシオンのすぐ北、海岸山脈の中にあったワイナリーで、数年間古木の畑からカベルネ・ソーヴィニョンを造っていた。それからの長い年月の中で、確かに他の土地でワインを造る誘惑に駆られたことはあった。しかし、ここリッジでしていることはとかく手がかかるために付きっきりでいねばならず、結局生涯の仕事となったのだ。



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 立花 峰夫
 フリーのワインライター/翻訳者。
 2003年ヴィンテージには、リッジ・ヴィンヤーズの研修生
  として醸造を経験。