Archives
連載コラム Vol.179

ポール・ドレーパーへの10の質問 その1

  Written by 立花 峰夫  
 
 数回に渡り、リッジ・ヴィンヤーズの総裁ポール・ドレーパーに向けられた、10のQ&Aを掲載する。質問者は、ブラジルにおけるリッジの正規輸入代理店ミストラル社のRodrigo Mainardi 氏。原文はリッジの公式ブログに2011年8月に掲載された。

<質問1>
 1976年、高名なパリ・テイスティングは、カリフォルニアを初めとした新世界の地に、最高のフランスワインに比肩しうるものを生むポテンシャルがあると世間に示した。2006年に行われたパリ・テイスティングの第二ラウンドでは、収穫から35年たったモンテベロの1971年が最上位に選ばれた。この勝利は、カリフォルニアワインが単に美味なだけでなく、熟成もするということの証なのか?

<回答1>
 1976年に行われた最初のパリ・テイスティングのあと、フランスでは次のように言われていた。「30年経てば、ボルドーワインは最高の状態に達するのに対して、カリフォルニアワインは完全に枯れているだろう」と。2006年に、同じテイスティングがロンドンとカリフォルニアで再現されたとき、1971年のモンテベロは二位に18点の差をつけて一位になった。これは、カリフォルニアワインの中にも、最高のボルドーワインに勝るとも劣らないほどよく熟成する銘柄があるという明白な証である。



<質問2>
 あなたはサンタ・クルーズ山脈のテロワールの熱烈なる信奉者だ。ナパ・ヴァレーとの違いは何なのだろう。

<回答2>
 サンタ・クルーズ山脈内モンテベロ・リッジにある我々の畑と、ナパ・ヴァレーで最良の畑との間には、大きな差が二つある。一つ目は、モンテベロのブドウ樹のほとんどが、石灰岩の下層土に根をおろしているという点。ナパ・ヴァレーには石灰岩はない。フランスに住む友人の醸造家たちは、この石灰岩が重要だと考えており、なぜなら石灰質土壌はワインにミネラル風味をもたらすとしてフランスでは尊ばれているからだ。だが、私が思うに最も重要なのは二つ目で、畑の標高が1600〜2600フィート(約500〜800m)あって、西側の太平洋まで15マイル(24km)という近さにある点である。そのおかげで、我々の畑はナパ・ヴァレーよりもかなり涼しい。夜温についてはボルドーよりも涼しいほどだが、昼間についてはわずかに温かい。夏の霧が届かない高地にあるのでブドウは完熟できるのだが、気温が低いおかげで生き生きした果実味としっかりした酸が得られる。過去50年間の平均を取ると、(モンテベロの)アルコール度数は12.9%から13.1%の間に収まる。一方、ナパ・ヴァレーで最高のワインの平均アルコール度数は、過去15年だと15%を超えている。



Archives
 立花 峰夫
 フリーのワインライター/翻訳者。
 2003年ヴィンテージには、リッジ・ヴィンヤーズの研修生
  として醸造を経験。