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連載コラム Vol.169
リッジにおける前・工業的ワイン造り その4
  Written by ポール・ドレーパー(2011年3月)  
 
モンテベロとエステート・カベルネ・ソーヴィニョン
 モンテベロの畑ですべて栽培されているボルドー品種については、アプローチが若干異なっている。長年の経験を通じ、さまざまな区画について、過去に生まれたワインのスタイルからおおまかに二等分することができるのである。ひとつめのグループは、若いうちから飲みやすく、その複雑味が開花するのも比較的早い。このグループの区画から、エステート・カベルネ・ソーヴィニョン(以前のサンタ・クルーズ・マウンテンズ)のワインが選ばれている。もうひとつのグループは、若いワインとしてバランスが取れていて楽しめもするのだが、少なくとも10年熟成させないことには、十分な深み、複雑性、卓越した品質がその姿を現しはじめない。モンテベロは、ブラインド・テイスティングによって、このグループの区画から選ばれている。二つのワインの最初のアッセンブリッジ(ブレンド)は、収穫翌年の2月初旬に行われている。二度目のブレンドは5月に行われ、この時にはプレスワインと、2月の段階ではまだ安定していなかったロットを含めるかどうかを吟味する。つまり、我々はひとつの畑から二つのワインを造っているのだ。スタイルの面でははっきり異なるが、畑の個性は共通している。

 まとめると、リッジではそれぞれの畑でのブドウ栽培を、その土地での長い経験に根ざしたものにしており、同時に最新の栽培技術の活用も怠っていない。前・工業的なワイン造りは、新鮮なブドウをワインに生成変化させる自然なプロセスへの敬意と、19世紀的な非介入主義モデルに端を発している。際立った個性を備えた、高品質なブドウを産する偉大な畑を手にしているなら、これこそが環境的・社会的に求められるアプローチだというだけでなく、優れたワインを安定的に造る最良の方法なのだ。

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 ポール・ドレーパー
 リッジ・ヴィンヤーズ 最高醸造責任者 兼 CEO
        
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