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連載コラム Vol.167
リッジにおける前・工業的ワイン造り その2
  Written by ポール・ドレーパー(2011年3月)  
 
前・工業的ワイン
 リッジにおいては当初から、こうした現代的でどんどん工業的になっていくワインが、前・工業的ワインに見られたような複雑性やその土地らしさ、熟成・発展する能力を欠いていると感じていた。それで我々は19世紀へと、ラ・クエスタのような最良のワイナリーや、ボルドーのシャトーでその時代に使われていた技術へと立ち戻ったのだ。過去と現在を統合する中で、前・工業的な技術を採用しては、最良かつ最も優しく作動する現代の設備とつなぎ合わせた。リッジは、その規模ではどこにも負けない、トップレベルの進んだ分析ラボを持っていると言われてきた。最小限しか二酸化硫黄を使用しないこともあって、テイスティングをしてそれと気づくよりもうんと前に、ラボでの分析によって問題発生を突き止められるようにしているのだ。

ブドウ畑
 こうしたワイン造りの技術を、リッジでは50年にわたって用いてきており、その目的はあたう限り品質が高く、その土地らしさを表したワインを造ることである。出発点は、とびきりのブドウ畑を持つこと。幸運なことに我々は、125年前に拓かれたモンテベロの畑を所有していた。禁酒法のあと打ち捨てられた状態になっていたこの畑には、1940年代後半に植えられ、現在樹齢60年を数えるカベルネがあった。最高で、最も表現力のある土地を求めながら最初に造られたジンファンデルは、樹齢86年の畑のものだった。1966年には、初めてガイザーヴィルのワインを仕込み(現在樹齢130年にもなっているブドウを使った)、それから今に至るまで毎年造り続けている。1972年は、最初にリットン・スプリングスが造られた年で、ブドウ樹は1902年に植えられたものだった。引き続いての年月の中で、我々は50箇所を超える古木のジンファンデルを扱ったが、結局ガイザーヴィルとリットン・スプリングスの品質が一番高かった。最も複雑で、特有の個性が一番安定しているのだ。1990年に、我々はガイザーヴィルの長期貸借権を、第一先買権付きで得た。1991年と1995年には、リットン大佐が1870年代に初めてブドウを植えたブドウ畑について、東側、西側の順で購入した。モンテベロとこの二つの畑が、我々の自社畑である。耕作は持続的な方法で行われており、土壌、微気候などその場所に影響を与えるすべての要素をワインにもたらすことで、その土地の真の姿が現れるように努めている。今日では、三つの自社畑産の果実が全体の75%を占めており、自社畑はまもなく有機栽培の認証を得る予定である。認証を得るためには、カヴァー・クロップ(被覆作物)を植えること、統合防除(IPM)技術を用いること、草刈機で雑草を刈ること、ブドウの果皮で作った堆肥を用いることなどが求められており、殺虫剤、除草剤、化学肥料は使えない。

 収穫時期を決めるにあたっては、味が最も重要な要素であり、ブドウが過熟ではなく適熟になった時に摘むようにしている。自社畑のものであれ、栽培家から購入したものであれ、リッジが用いるブドウはすべて手収穫されているから、畑での選果が可能である。

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 ポール・ドレーパー
 リッジ・ヴィンヤーズ 最高醸造責任者 兼 CEO
        
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