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連載コラム Vol.163
カリフォルニアにおける黒ブドウ栽培品種の変遷
  Written by 立花 峰夫  
 
 前回まで2回にわたって、今日におけるジンファンデルの位置づけについてのコラムをお届けしたが、今回はカリフォルニアのブドウ栽培品種の変遷についてご紹介しよう。2008年現在、カリフォルニア州における黒ブドウの栽培面積順位は以下の通りである(カッコ内は黒ブドウ栽培面積総合計に対する比率)。

第1位 カベルネ・ソーヴィニョン 30,372ヘクタール(26%)
第2位 ジンファンデル 20,375ヘクタール(17%)
第3位 メルロ 19,127ヘクタール(16%)
第4位 ピノ・ノワール 13,481ヘクタール(12%)
第5位 シラー 7,639ヘクタール(7%)
第6位 ルビーレッド 4,588ヘクタール(4%)
●黒ブドウ 総合計: 116,905ヘクタール

 アメリカの「固有品種」(厳密な意味では違うが)、ジンファンデルが2位と健闘している以外は、第1位〜第5位までいわゆる人気国際品種が占めている。ジンファンデルを含めた第1位〜第5位までで、黒ブドウの総栽培面積の78%を占めていて、一部の人気品種、すなわち国際品種とジンファンデルへの人気集中がはっきりと見てとれる。ちなみに、第6位に登場しているルビーレッドという聞きなれないブドウ品種と、その相対的「人気」のカラクリについては、次回のコラムで書く予定である。

 上記の統計は、私たちが日々目にするカリフォルニアワインのラベルの数々から、想像できる通りの結果だと言えるが、ひと昔前まではまったく異なる状況だった。1970年代の初めには、いわゆる国際品種の栽培面積など無いに等しい状況で、「ガブ飲みワイン用品種」(この中には当時のジンファンデルも含まれる)が8割以上を占めていた。ジンファンデル以外に、当時幅を利かせていた黒ブドウ品種は、アリカンテ、カリニャン、プティット・シラーなど。リットン・スプリングスや、ガイザーヴィルの古木の混植区画に見られるブドウたちである。

 1970年代初頭の時点で、カベルネ・ソーヴィニョンの当時の栽培面積は、わずか5%であった。1976年、伝説のパリ・テイスティングに登場したリッジ・モンテベロを含むカリフォルニア産カベルネ・ソーヴィニョンの各銘柄は、当時はずいぶんなマイノリティだったのだ。パリでの歴史的勝利まで、世界の注目を集めなかったことは少しも不思議ではない。

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 立花 峰夫
 フリーのワインライター/翻訳者。
 2003年ヴィンテージには、リッジ・ヴィンヤーズの研修生
  として醸造を経験。