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連載コラム Vol.159
ウェブでの情報発信とリッジのブログ
  Written by 立花 峰夫  
 
 ここ2〜3年で、ワインに関する情報発信・伝達のメディアが変貌しつつある。わずか5年ほど前までは、「帝王」ロバート・パーカーを筆頭とする有名ワイン評論家が世界を牛耳っていて、その情報伝達も紙媒体(雑誌やニュースレター)が中心であった。

 しかしここ数年で状況が変わった。インターネット上への「主戦場のシフト」と、ワイン評論に関するある種の「民主化」が起こったように思われるのだ。まず、パーカーの影響力がかつてほどなくなってきたこと。世界中のワインを唯一絶対の基準で評価する「神の舌」の影が薄くなり、変わって産地ごとのプロフェッショナルが次々に育ってきている。ブルゴーニュの専門家であるアレン・メドーズ Allen Meadows、シャンパーニュの専門家であるピーター・リエム Peter Liem など。両名とも、ウェブサイトが情報発信の主メディアだ。ネットへの移行は「旧勢力」も同じで、パーカーも、イギリスのワイン女神、ジャンシス・ロビンソンも、自身のウェブサイトには力を入れている。古きよきワイン雑誌の衰退が、日に日に進みつつあるように見えるのは、活字好きの私のような人間には少し寂しい(その傾向は、スマートフォンの普及によってますます拍車がかかるであろう)。

 ウェブで情報発信をするのは、なにもプロフェッショナルだけではない。一般のワイン愛好家が、日々飲むワインのレヴューを投稿し、それを「群集の知恵」として閲覧者全員が共有する有力サイトが増えてきている(ワインエイプ WineApe など)。ワイン愛好家が個人でやっているワインブログともなれば、まさに星の数ほどある。

 ブログを情報発信に活用しているのはなにも飲み手側だけではない。ワイナリーも、ウェブサイトに加えてオフィシャルブログを設けているところが増えており、更新頻度が高く内容が良いところは読者も多い。リッジもそのひとつ。モンテベロ・ワイナリーのテイスティング・ルーム責任者であるクリストファー・ワトキンスが、興味深い記事を次々にアップしている。英語が読める方は、ぜひ以下をブックマークしてほしい(本コラムでも今後、以下のブログ記事を適宜翻訳する予定である)。
http://blog.ridgewine.com/

 なお、世界中のワイン関係ブログを審査し、チャンピオンを決める「ワイン・ブログ・アワーズ」というコンテストがアメリカでは2007年以降毎年開かれている。いくつかの部門ごとに審査は行われるのだが、去る2010年、リッジのブログはワイナリー部門で最終選考まで残った。ちなみにこの年優勝したのは、ご近所サンタ・クルーズにある仲良しワイナリー、ボニー・ドゥーンのブログであった。

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 立花 峰夫
 フリーのワインライター/翻訳者。
 2003年ヴィンテージには、リッジ・ヴィンヤーズの研修生
  として醸造を経験。