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連載コラム Vol.149
創設50周年記念 回顧テイスティング その3
Monte Bello Vertical Tasting 1968-1988
  Written by 立花 峰夫  
 
 引き続き、2010年3月に行われた創設50周年記念の回顧テイスティングについてお伝えする。モンテ・ベロの垂直試飲(1968〜2005)についての、筆者のテイスティング・コメント、後半である。最も古い1968年はプレ・ドレーパー時代の最後のヴィンテージで、1970年との鮮やかなコントラストがなによりも興味深かった。

●Monte Bello 1968 / 12.7%
まだ色がしっかり残っていて、この先があることを感じさせる外観。香りは少し粗い印象があるものの、まだ力強さを感じる。黒系果実の凝縮感。ヘドニスティックで迫力のあるブーケ。ウェットストーン・キャラクターも感じられる。味わいでもパワーがバランスや繊細さにまさる仕上がりだが、果実の強さが印象的。数値よりもアルコールを強く感じる。非常に長いフィニッシュ。タンニンは余韻に粗さを見せるが、まだまだ存在感を強く主張している。前任者デイヴ・ベニオンによる最後のヴィンテージ。明らかにドレーパーのスタイルとは異なっている(抽出が強くパワーを強調したスタイル)。

●Monte Bello 1970 / 13.5% magnum bottle
こちらもまだしっかりと色がある。香りのボリュームは強く、完全に開いている。紅茶、腐葉土、タール、秋の森。熟成を重ねた末の柔らかい味わいだが、まだ底に果実が感じられる。酸の強さが全体を引き締める。溶けたタンニンだが、後のヴィンテージと比べると、少し粗さが余韻に見られる。非常に長い余韻。まだ若さが残っていて、バランス的にも1968に優れる。驚きのヴィンテージ。

●Monte Bello 1978 / 13.6%
力強い香り。ドライフルーツ、リキュール様果実のニュアンスが顕著で、1970と比べると格段に甘く若い香り。大いに蠱惑的だが、エレガンスも感じられるブーケ。口に入れるとエントリーから果実の甘味が広がり、それを溶けたタンニンとしっかりした酸が支える完璧なハーモニー。非常に長い余韻。アルコールも高く、比較的新世界スタイルのモンテベロだが、完成度は極めて高くインパクトもあるヴィンテージ。

●Monte Bello 1981 / 12.0%
香りのタッチは比較的軽く、繊細なニュアンス。1978よりも熟成の進んだ香りで、ミネラルのニュアンスを強く感じる。落ち葉の香りが優しく広がり印象的。スワリングし、時間が経つと、甘くミルキーなニュアンスが顔をのぞかせる。味わいも軽やかで非常に繊細。他のヴィンテージと比べても際立って酸がデリケートで目立つ。Big vintageではないが、シャンボール・ミュジニを思わせるバランスがとても美しい。涼しかった気候が反映されたフィネスのあるスタイル。

●Monte Bello 1984 / 12.9%
香りのボリュームはさほど強くなく、土の香りが印象的なワイン。凝縮した果実が得られた強いヴィンテージだというが、1981と似たパワーよりもエレガンスに傾いたスタイルに思われる。味わいでは果実味よりも酸とタンニンの骨組みが前に出ている。ストラクチャーの強さ、凝縮感は感じられるものの、熟成によって生まれた優しさのほうが、最終的な印象の中では残っている。

●Monte Bello 1988 / 12.9%
熟成のニュアンスよりも、若さがまだ勝っているブーケ。1981、1984と同じラインに並ぶエレガントな香りだが、果実がまだしっかりと自己主張している。土臭いニュアンスがわずかに感じられるが、複雑なブーケの中に完全に統合されている。エントリーからカリフォルニアらしい甘いフルーツの味わいが広がる。全体に力強い仕上がりで、タンニンの存在感がまだしっかりとある。酸も強いが、果実とタンニンの裏側にまわっている。

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 立花 峰夫
 フリーのワインライター/翻訳者。
 2003年ヴィンテージには、リッジ・ヴィンヤーズの研修生
  として醸造を経験。