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連載コラム Vol.148
創設50周年記念 回顧テイスティング その2
Monte Bello Vertical Tasting 2005-1991
  Written by 立花 峰夫  
 
 前回のコラムでお届けした、2010年3月に行われた創設50周年記念の回顧テイスティング。初日の夜を彩ったのはモンテ・ベロの垂直(1968〜2005)である。以下は1991〜2005についての筆者のコメント(1980年代以前のコメントについては次回掲載する)。

●Monte Bello 1991 / 13.1%
色はまだ非常しっかりとしていて、香りは非常に強く華やか、完全に開いている。強い凝縮感と、硬質な黒系果実のニュアンス。紅茶、枯葉といった熟成香も感じられ、スパイシーなニュアンスもある。非常に複雑で層を成した香りのプロファイル。 まだまだ強さが勝る味わいで、熟成のピークに達するにはこの先長い時間が必要。酸とタンニンの強靭なストラクチャーと、恐るべき凝縮感・求心性。エントリーでは甘いフルーツが感じられるものの、中盤からは強烈なストラクチャーが口中を支配する。恐るべきミネラル感。非常に長いフィニッシュ。クラシックという形容詞がぴったりのヴィンテージで、長年のワイン造りの洗練を通じて到達した完成形に思われる。金色のラベルをまとうに相応しい記念碑的逸品。

●Monte Bello 1992 / 13.4%
少し閉じ気味の印象で、抑制のきいたアロマ。比較的スパイシーなニュアンスが強く、エキゾチックな雰囲気。土の香りも強い。全体に若々しくパワフルだが、まだ香りのポテンシャルが開花しきっていない様子。 味わいの第一印象は、香りと比べると柔らかく優しい。繊細な果実味がエントリーで感じられる。ただし、中盤から余韻にかけて強靭なタンニンが追いかけてきて、強いストラクチャーが前面に出てくる。酸は他の年よりも穏やか。熟度の高いブドウから生まれた力強いヴィンテージ。

●Monte Bello 1995 / 12.5%
アメリカンオークの香り、特にロースト香がトップノーズで前面に出ている。とてもスパイシーでエキゾチック。ミント、白檀、アジアンスパイスなど複雑。凝縮していてパワフルな香り。ミネラルのニュアンスも強く、非常にモンテベロらしい。 しっかりとした酸、強靭なタンニンと、強すぎず弱すぎずの果実味が高次元で調和している。現在最初のピークを迎えているように思われるが、まだまだ20年以上にわたって熟成を続けられるヴィンテージ。現時点で最高のバランスだが、ストラクチャーから推定される将来性は素晴らしい。

●Monte Bello 2000 / 13.4%
まだ紫の残る深い赤。フレッシュなブルーベリーやカシスなど、柔らかく優しいフルーツのアロマと、強すぎないオークのニュアンス。しっかりと果実が熟していることが感じられるが、アロマのプロファイルの中で優しいバランスが達成されていて、突出した攻撃的ニュアンスはない。 モンテベロにしては熟れたフルーツが前面に感じられるほう。タンニンは強いがよく熟れていて柔らかい。酸もさほどバランスの中で目立たない。ストラクチャーはしっかりあるが、どちらかといえば熟れた果実とバランスを楽しむヴィンテージに思われる。

●Monte Bello 2004 / 13.2%
しっかりと濃い紫色。まだ香りは完全に閉じていて、オークとほのかに香る黒系果実の香りが支配的。メトキシピラジンとは異なるグリーン系の爽やかな香りと、ウェットストーン・キャラクターは感じられる。 味もまだまだ固い。タンニン、酸が前に出て、若い果実が背後に退いているため、若いバローロのような味わいになっている。冷涼な気候が反映されたスタイル。数年を置くことで味が落ち着き、楽しめるようになるはず。

●Monte Bello 2005 / 13.4%
こちらもまだ完全に香りが閉じている。黒系果実とウェットストーン、オークの香りばかり。ただし、奥行きの深さとポテンシャルは十分に感じられる。 口に含むと、エントリーでは若く凝縮したフルーツが前に出ているが、すぐに強いタンニンと酸が追いかけてきて口中を支配する。非常に強い凝縮感で口が痛いほど。ただし、他のヴィンテージほど酸のエッジは顕著ではない。こちらも少なくとも数年は置きたい。

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 立花 峰夫
 フリーのワインライター/翻訳者。
 2003年ヴィンテージには、リッジ・ヴィンヤーズの研修生
  として醸造を経験。