Archives
連載コラム Vol.147
創設50周年記念 回顧テイスティング その1
  Written by 立花 峰夫  
 
 2010年3月2日・3日の二日間、カリフォルニアのリッジ・ヴィンヤーズにて、ワイナリー創設50周年を祝う回顧テイスティングが開催された。昨年が、総帥ポール・ドレーパーの醸造責任者着任40周年だったこともあり、来し方行く末に思いをはせようという趣向である。

 イベントに招待されたのは、アメリカおよび世界各国のワインジャーナリスト13名。イギリスのジャンシス・ロビンソン、フランスのミシェル・ベタンヌ、アメリカのダン・バーガー、ジョシュア・グリーン、タイラー・コールマンなどの「大物」も、多数参加していた。

 イベントの随所で、リッジ・ヴィンヤーズの現在が、ポール・ドレーパーならびに現場の醸造家、栽培家の口から語られ、活発な質疑応答および議論が続く。昨今の新しい取り組みの中では、モンテベロの畑の拡張および、数年前から本格化している有機栽培への切り替えになどが、特に時間を割いて丁寧に説明されていた。

 イベントの目玉となったのは、モンテベロ、ガイザーヴィル、リットン・スプリングスという三つのフラッグシップ・ワインの垂直試飲である。モンテベロについては、2005年から1968年までの12ヴィンテージが(2005, 2004, 2000, 1995, 1992, 1991, 1988, 1984, 1981, 1978 1970, 1968)、リットン・スプリングスとガイザーヴィルについては、それぞれ2005年から1970年代までに遡る6ヴィンテージが(2005, 2001, 1999, 1997は共通、リットン・スプリングは1987と1973、ガイザーヴィルは1988と1976)、すばらしい料理とともに振舞われた。ジンファンデル2銘柄については、ヴィンテージ・年代別にペアになったワインをブラインドで試飲し、テロワールの個性を発見できるかという「遊び」もなされている。

 モンテベロも二つのジンファンデルも、すべてのヴィンテージが素晴らしい状態で、卓越した熟成能力を参加者たちにまざまざと見せつけてくれた。とりわけ、瓶詰めから20年以上が経過したジンファンデルの美しさには驚くばかりで、この品種が熟成しないという「定説」が見事に裏切られている。モンテベロの、熟成ポテンシャルとピークの高さは言わずもがなであろう。ボルドーにもカリフォルニアにも似たものがないその独自のスタイルは、ドレーパーの長いキャリアを通じ、着実に洗練の度合いを増していた。

Archives
 立花 峰夫
 フリーのワインライター/翻訳者。
 2003年ヴィンテージには、リッジ・ヴィンヤーズの研修生
  として醸造を経験。