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連載コラム Vol.13
2004 ハーヴェスト・レポート No.3
  Written by 立花 峰夫  
 
歓びの収穫完了!
 10月23日、断続的に降る小雨の中で本年度のハーヴェスト・パーティが執り行われ、醸造・栽培クルーたちは今年の収穫作業の終了を祝った。丁度この日が、モンテ・ベロの畑における最終収穫であった。
 モンテ・ベロのカベルネの収穫は10月10日の週以降に本格化し、16日にはソノマのパガニ・ランチから最終のジンファンデルも運びこまれた。だが17日から20日にかけて若干の雨が降り、また翌週初めにも雨が予想されていたため、最後のカベルネ10区画は、リットンの栽培クルーも動員して21日から23日の三日間ですべて収穫された。実際、25日・26日は大雨となり、サンフランシスコでは床下浸水した地域もでたという。冬が雨期にあたるカリフォルニアでは、10月末以降、どんどんと雨の日が増えていく。
 8月17日という記録的な早さで始まった2004年の収穫だが、終わりは例年通りの10月下旬、丸二ヶ月以上にわたるひときわ長いシーズンとなった。収穫前半はソノマを中心としたジンファンデル、後半はモンテ・ベロのボルドー品種、そしてその間に二週間もの端境期があったことは前回のコラムでもお伝えした通りである。
 ボルドー品種のほうが一般にジンファンデルよりは晩熟であるものの、同じ地域で栽培すればこれほどの差は生まれない(実際、ナパのオーパス・ワンでは、9月末にカベルネの収穫をほぼ終えていた)。この遅めの収穫こそが、モンテ・ベロのワインをユニークにしている特異性であり、今年ほどそれがはっきり出た年はないだろう。標高800メートルの冷涼な気候の下、ブドウは十分な酸を保ちながら、ゆっくりとフレーバー(香りの成分やタンニンなど)を発達させていく。
 とりわけ今年は、成熟の終盤にあたる9月後半から10月にかけて気温が随分と下がったため、糖分が上がりすぎずることなくフレーバーが熟することができた。この期間中は、毎日のようにブドウのサンプルがラボに運び込まれ、化学分析とテイスティングによって慎重に収穫時期が見極められている。終盤には雨のために若干収穫を急いだ区画も発生したが、色やフレーバーの面では申し分ないブドウであった。
 現在(10月28日時点)も、最後に収穫されたカベルネの仕込みはまだ続いている。2004年がどんなスタイルとなるかを語るには時期尚早だが、おそらくは長熟の年になりそうである。
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 立花 峰夫
 フリーのワインライター/翻訳者。
 2003年ヴィンテージには、リッジ・ヴィンヤーズの研修生として醸造を経験。