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連載コラム Vol.129
2009年ハーヴェストレポート No.2
  Written by 立花 峰夫  
 
2009年のハーヴェストは、10月に入った今もあわただしく続いている。今回は、今年のハーヴェストから新たに導入された、選果テーブルについてご紹介しよう。ハーヴェストの開始直前に、モンテベロ・ワイナリーの醸造責任者、エリック・ボーハーが記した文章である。

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毎年変わる天候条件はもちろんのこと、どのヴィンテージでも予測不能の出来事が起きるものである。だからこそ、リッジで高品質のワインを造るにあたっては、ブドウの選果が重要になる。手収穫の際に選別することが、優れた果実を手に入れるための第一歩である。摘み取りにあたって、経験豊かなブドウ畑のスタッフたちが、この決定的に重要な仕事を注意深くこなしている。そして、この2009年ヴィンテージから、モンテベロ・ワイナリーに新しい選果システムが導入されることになった。この改革プロジェクトは昨年の六月から始まったのだが、それ以前に莫大な時間を費やして研究を重ね、10年にわたって開発を続けてきたものである。プロジェクト開始以降も、いくつかの改善が行われてきた。もともとの計画では、ベルトコンベアのブドウ受けを設置し、ブドウの房をそこから直接ゆっくりと、除梗機に送りこむ予定であった。果実がワイナリーに届いたあと、(ベルトコンベア上で)さらなる選果ができるわけである。しかし、そこから我々は設計を変更し、除梗後にもう一度選果ができるようにした。果粒が果梗から離れ、(粒を押しつぶさないように)広く開いたローラーを通過したあと、無破砕の果粒は一連の振動するテーブルを通り、自動選別機によって不良果が取り除かれる。「ジャック」と呼ばれる果梗の切れ端、小さな未熟果、レーズンが、発酵タンクへと流れている果実の中からはじき出されるのだ。この新しい設備・機材は、優しくブドウを扱うという我々の哲学を、さらに強化してくれるものである。稼動速度の面では、新しい設備は従来の設備よりも遅いものの、品質の向上を考えるとこのプロジェクトには十分価値がある。ただし、効率と品質は、完全に相容れないものではない。新しい設備とLEDの照明は、以前のものと比べて半分の動力しか消費しない。この新しいシステムを、2009年の仕込みで用いるのが楽しみである。

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 立花 峰夫
 フリーのワインライター/翻訳者。
 2003年ヴィンテージには、リッジ・ヴィンヤーズの研修生
  として醸造を経験。