Archives
連載コラム Vol.126
ワイン生産者の選択肢:二つの世界の最良部分 その2
  Written by ポール・ドレーパー  
 
その土地固有の性格というものには、さまざまな程度がある。ブルゴーニュ地方の小さな区画(時にはわずか数畝に過ぎないぐらい小さい)では、ブドウ栽培方法の差は言わずもがな、土壌や日当たりのわずかな違いですら、ある所有者の区画とほかの所有者の区画で性格や品質の差を生むことがある。それぞれの区画のブドウはそれでも、収量過多であったり栽培管理が拙かったりしない限り、小さな町や村の個性を表現しているのである。カリフォルニアに話を移すと、モンテベロの土壌はその下に石灰岩が横たわっているのだが、やはり区画ごとに違いがある(それほど大きな違いではない)。丘の連なりに沿ってある畑だから、日当たりにも差があるが、降雨量や気温についてはほぼ同一と言ってよい。先に例としてあげたブルゴーニュの村と同様、モンテベロも特定のワイン産地の中にある小さなエリアに位置しているのだ。同じく、ガイザーヴィルの畑(大昔にロシアン・リヴァーの流域だった氾濫原の北端にあり、砂利質土壌)、リットン・スプリングスの畑(台地とゆるやかな丘からなる)も、ブルゴーニュの村と似通っている。それぞれ、いくつかの土壌タイプを持つが、降雨量と気温についてはほとんど等しいのである。

ブルゴーニュの村がそうであるように、リッジの三つの畑も複数の区画に区切られている。モンテベロでは33前後、ガイザーヴィルは14、リットン・スプリングスは29である。どの畑も、相互に補い合う複数の品種が植えられており、どのブドウも畑内のわずかな日当たりや土壌の差に反応する。品種ごとに、成熟の速度も異なっており、早い品種と遅い品種がある。最高の品質を求めるのであれば、品種ごとに理想の熟度で収穫し、別々に発酵させねばならない。そのようにしておけば、醸造家は後から、ブラインド・テイスティングを通じて選択することができるのだ。最も強く、畑の個性を示すワインはどれなのか。非常に良質であっても、柔らかくて早くから飲み頃を迎えるワインや、畑の個性をそれほど示していないものもある。このテイスティングを通じた選別によって、特定の場所の個性を強調することができる。ブルゴーニュの村で同じことをするなら、その村のテロワールを最もよく表現している区画から産される、最良のワインだけを選ぶということになろう(区画別に所有者が違うから、これは理論上だけの話である)。一方、工業的なアプローチを単純に採用した場合、こうした選択がなされることはない。すべての区画をほぼ同時期に収穫し、ひとつないしは数個の大型発酵タンクで混ぜてしまうからだ。

Archives
 ポール・ドレーパー
 リッジ・ヴィンヤーズ 最高醸造責任者 兼 CEO