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連載コラム Vol.116
ジムソメア・ランチのジンファンデル その2
  Written by 立花 峰夫  
 
今回から2回にわたり、過去のリッジ発行ニュースレターに掲載されたジムソメア・ジンファンデルの解説文を訳出する。

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 ジムソメアのジンファンデルには、心温まるなにかがある。ほかのジンファンデルと並べてブラインドで試飲したとしよう。いつも感じられるラズベリー、タール、ミネラルの香りと、しっかりとした酸によって、ついつい杯を重ねてしまうのがこのワインなのだ。一世紀以上前、ジムソムメア農園に拓かれた150エーカーのブドウ畑のうち、節くれだった樹が植わるこの五ヘクタールだけが今日まで残る唯一の区画である。ブドウ樹たちは、我々のうちの誰よりも早く生まれており、我々の多くよりも長生きするだろう。そのブドウからできたワインはとにかく個性が際立っているので、ほかの場所で同じものができることはない。こうしたあれこれを、まるでブドウ樹は知っているかのようだ。個性、あるいは姿勢と呼んでもよいものを備えるワインを考えてみると、ジムソメア・ジンファンデル(ワイナリーの近所では愛情を込めてジム・ジンと呼ばれる)はまさにそうしたワインなのである。

 世界で最も偉大なワインは、気候が厳しい地域で生まれている。そういった地域で栽培されているブドウは、かろうじて熟するのが精一杯である。ヨーロッパ人の醸造家の中ではこの考え方は一般的で、実際、その証拠となる例は簡単に見つけることができる。ブルゴーニュ産のピノ・ノワール、モーゼル産のリースリング、ローヌ渓谷北部産のシラー、ピエモンテ産のネッビオーロなどである。こうした地域のブドウは、長い生育期間を通じ、熟するために苦闘している。

 冷涼なサンタ・クルーズ山脈、標高1600フィートの地点にあるジムソメア農園のジンファンデルは、確かに型にぴたりとはまるワインである。収穫時期になると、熟した房を求めて二度、年によっては三度に分けて摘み取りが行われている。摘み取り人夫が手ぶらで帰ってくるようなこともある。例外でしかないとはいえ、1988年には秋の雨が邪魔をしなかったため、アルコール度数が14パーセント代前半まであがった。しかしながら普通だと、12パーセントから13.5パーセントまでの範囲に収まっており、これはカリフォルニア州でつくられるほかのジンファンデルと比べると、相当に低いのである。

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 立花 峰夫
 フリーのワインライター/翻訳者。
 2003年ヴィンテージには、リッジ・ヴィンヤーズの研修生
  として醸造を経験。