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連載コラム Vol.110
2008 ポール・ドレーパー40年目のヴィンテージ その3
  Written by 立花 峰夫  
 
ポール・ドレーパーの40年目のヴィンテージ(2008)を祝う、著名人のコメントを引き続き紹介していく。今回は、スティーヴン・スパリュア、ジェームズ・ローブ、ジェイ・マキナニー、セレナ・サトクリフの各人の言葉である。

◆スティーヴン・スパリュア
 イギリス人のワイン評論家。1976年にカリフォルニアワインを世界の檜舞台に立たせた事件、「パリスの審判」(パリ・テイスティング)の仕掛け人として有名な人物。

「1976年の始め、パリ・テイスティングに出すワインを選ぶためにナパに向かっていた私に、ある友人が赤ワインの入ったグラスを差し出した。これはなんだと思う、というわけだ。サン・ジュリアンではないかと推測し、シャトー・ベイシェヴェルだと答えた。ところがそれは、リッジのモンテベロ1970年だった。その時が、このワインとの初めての出会いであり、ポールとの間接的な出会いでもあった。かくしてモンテベロの1971年が、パリ・テイスティングに現れることになったのだ」


◆ジェームズ・ローブ
 世界で最も発行部数の多いワイン雑誌、『ワイン・スペクテイター』に執筆するワイン評論家。カリフォルニアワインの評論については、パーカーと並んでもっとも影響力のある人物である。

「ポール・ドレーパーは究極の紳士であり、学者でもある。彼は、ワインに関する極めつけに知的な理解と評価方法を、カリフォルニアの地にもたらしてくれた。新旧世界の架け橋となったポールは、モンテベロでボルドーからきた古典品種に取り組みつつ、カリフォルニア州の野生児であるジンファンデルを飼いならして上品にしてくれた。しかしながら、私が一番好きなのは実のところ、モンテベロのシャルドネなのである。そんな人間はおそらく、地球上で私一人かもしれない」


◆ジェイ・マキナニー
 1980年代以降に活躍するアメリカの小説家。代表作に『ブライト・ライツ・ビッグ・シティ』など。大の付くワイン愛好家で、これまでに二冊ワインに関するエッセイ集を著している。

「もしポール・ドレーパーが日本人だったら、人間国宝に指定されていただろう。我々は少なくとも、彼を桂冠詩人に任命すべきだと思う」


◆セレナ・サトクリフ
 イギリスの名門オークションハウス、サザビーズのワイン部門責任者。マスター・オブ・ワイン資格の保持者で、ジャーナリストとしても活動している。

「ポールはいわば、完璧な『アテネ人』である。万能選手であり、どんなことにも関心を持ち、常に自分を高めようとしている。私にとっての彼は、当初から最も偉大で最も完成されたカリフォルニア産カベルネの造り手であった。比類なき味わいのモンテベロは、ポール自身と同様に時の試練に耐えてきている」


 このシリーズも次回が最終回。ポール・ドレーパーの学生時代からの親友、フリッツ・メイタグが寄せた長いコメントで、シリーズを締めくくる。

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 立花 峰夫
 フリーのワインライター/翻訳者。
 2003年ヴィンテージには、リッジ・ヴィンヤーズの研修生
  として醸造を経験。