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連載コラム Vol.108
2008 ポール・ドレーパー40年目のヴィンテージ その1
  Written by 立花 峰夫  
 
リッジの総帥にして、カリフォルニア屈指のカリスマ醸造家であるポール・ドレーパーが、モンテベロにやってきたのが1969年のこと。今年、2008年は、それから数えて40年目のヴィンテージにあたる。この節目の年を祝うべく、ワイン業界のスターたちがポールにコメントを寄せてくれている。今回から3度にわたり、各人のコメントを紹介していこう。

◆ジャンシス・ロビンソン  現在イギリスで最も力のある女性ワインライター。著書・編纂書に『地図で見る世界のワイン』(ヒュー・ジョンソンとの共著)、『Oxford Companion to Wine』など多数。

「私はポールを、『ヨーロッパとアメリカの間にいる人』と呼びたくなる。その知識、経験、視点といったものが、苦もなく大西洋を股にかけているからだ。彼は同時に、南北のアメリカ大陸をも股にかけようとしており、かといって中途半端だというわけではまったくない。彼はむしろ、この地球で最も思慮深く、最も偏りがなく、もっとも一貫性のあるワイン実践者の一人なのだ。我々はみな、その恩恵を被っている」

◆スティーヴ・キスラー  カリフォルニアにおけるシャルドネ造りの「帝王」。畑名を冠したワインの数々は、最高のブルゴーニュをも凌駕する逸品である。UCデイヴィスを卒業後、リッジでポール・ドレーパーのアシスタントを3年間務め、1978年に独立。

「今思い返せば、リッジで働けたことは、自分にとって幸運なことだった。小規模な世界レベルのワイナリーを、どのように運営するかをポールから学んだし、彼のワイン造りに関する様々な見識に触れられたのも幸いだった。30年前、伝統的なワイン造りをカリフォルニアの条件に適用することが、いかに重要かをポールは説いてくれた。天然酵母、自然なマロラクティック発酵、常に人為的介入を最小限にとどめること、などだ。土地に対する敬意が、リッジにおけるあらゆる醸造上の判断に生かされていたように思う。畑名入りのワインはどれも、それぞれの場所に固有の表現をつかまえようとする、ポールの試みであった。昔、リッジでポールに学んだ教訓の数々は、その後の道のりにおいて計り知れないほど貴重なものとなっている」

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 次回は、トーマス・ケラー(フレンチ・ランドリーのオーナーシェフ)、ランドール・グラム(カリフォルニアの醸造家)、ロバート・パーカー(アメリカ人ワイン評論家)などのコメントをご紹介する。

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 立花 峰夫
 フリーのワインライター/翻訳者。
 2003年ヴィンテージには、リッジ・ヴィンヤーズの研修生
  として醸造を経験。