Archives
連載コラム Vol.104
2008年ハーヴェスト・レポート No.1
  Written by 立花 峰夫  
 
 「自然なブドウ栽培」に関する連載の途中だが、これからしばらく2008年のハーヴェスト・レポートを掲載させていただく。以下は、毎年現地で醸造作業に携わっている、黒川信治氏からの報告である。

***********************************

 2008年ヴィンテージの幕開けは、例年より少し早めの8月23日。お決まりのパソ・ロブレスで始まっている。珍しいことに同日には、ガイザーヴィルにある最も樹齢の若いジンファンデル(19年)も、収穫されている。

そんな2008年は、どんな年であったのであろうか。

 特徴その1として、2月に降った雨を最後に3月以降、雨らしい雨が降らなかった極めて乾燥した年であった。「3〜6月の降水量が、100年間で一番少なかったレコード・イヤーである」(栽培責任者 デヴィッド・ゲイツ談)。実際のデータを見てみると、モンテベロ・ワイナリー、リットン・スプリングス・ワイナリーともに、2.5mm以上の雨を記録したのが6日であった。そのせいで、ブドウの果実は小さく収量も少ない年となっている。

 特徴その2は、カリフォルニアにしては非常に珍しく、霜の害が、3月下旬と4月中旬の2回、発生している。モンテベロにある記録計によると、4月13日の朝に訪れたマイナス2度(摂氏)の寒波の影響を受け、出芽のタイミングの早いメルローとプティ・ヴェルドの一部が凍害を被り、収穫量が激減。この寒波の影響は、ソノマのプティ・シラーとジンファンデルにも及んでいる。

 特徴その3は、雨が少ないためにブドウの粒が小かったのに加えて、生育期全体が早く訪れているので、必然的に収穫期が早くなったということである。そして、8月下旬から9月初旬にかけて数日続いた32度を越える日が、さらにブドウの熟成を早める結果となった。

 これら3つの要因により、ソノマ地区およびパソ・ロブレスの全てのジンファンデルが、平年より早い8月23日から9月15日にかけて収穫された(毎年収穫の遅い、冷涼な気候のパガニ・ランチは除く)。また、この暑さはモンテベロのシャルドネの成熟も早め、平年より1〜2週間早い9月2日から9月15日に全ての収穫を終えている。

 栽培責任者のデヴィッド・ゲイツと、モンテベロの醸造責任者であるエリック・ボウハーに今年はどんな年であったかと聞いてみたところ、デヴィッドは天候と畑の様子から「一番近いのは1999年だね」、エリックはタンニンの抽出状況から「ジンファンデルは2001年のようなヴィンテージになるのでは」(この時点でまだモンテベロは収穫されていない)と、それぞれ違った答えが返ってきた。1999年、2001年ともに力強い偉大な年である。どちらの年に近づいても楽しみなヴィンテージであることは間違いない。(9月25日)

Archives
 立花 峰夫
 フリーのワインライター/翻訳者。
 2003年ヴィンテージには、リッジ・ヴィンヤーズの研修生
  として醸造を経験。