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連載コラム Vol.102
リッジはどれくらい環境に優しいか?
  Written by デヴィッド・ゲイツ  
 
 これまで以上に、人々は口にするものについて知りたがるようになっている。どんなふうに育てられたのか? どこで? どれくらい健康にいいのか? ワインについても同じである。ワインの原料になったブドウが、有機栽培のものなのか、ビオディナミのものなのか、持続可能農法(減農薬農法)のものなのか、はたまた慣行農法(かなりの量の農薬を使う農法)のものなのか--こうしたことを気にする人々が増えている。リッジでは全体として持続可能農法が行なわれており、自社畑については有機栽培の認証を得ようとしている段階である。

 この持続可能農法および有機栽培への取組みは、何を意味するのだろうか。持続可能農法(サステイナブル・アグリカルチャー)とは、環境保全に気を配るとともに、地域社会への責任をも果たし、そして経済的に実現・維持可能なもの、と要約することができるだろう。この三つの原則は、農園運営に関連するあらゆる意志決定を行なうにあたっての、枠組みと方向性を与えてくれる。持続可能性とは、常に動いている標的・目標であって、精神のあり方だと言うこともできる。地球への悪影響を減らすための改善が、絶えることなく可能なのだ。有機栽培とは、認可された有機栽培用の農薬や処置だけを用いる、持続可能な農法だと定義できる。


草を苅るべきか、苅らざるべきか

 環境に優しいブドウ畑にするためには、非常に多くの判断をせねばならない。たとえば、ブドウの畝間に生える草を苅ることを考えてみよう。簡単そうな話である。草刈り機を取り出して苅るだけ、というわけだ。もっと楽をしたければ、草刈り業者に電話すればよい。しかし、草刈りをすると決める前に、いくつか確認・分析しておくべき基準がある。まず、草の種がどれぐらい熟しているか。草刈りの時点で種が熟していることは決定的に重要で、さもなくば望ましい草が再び生えてこなくなる。次に、地面がどれくらい乾いているか。濡れた土の上にトラクターを走らせると、土が固くなり、土壌の好ましい構造が壊れてしまう。そして、その季節にどれくらいの雨が降ったか。乾燥した年であれば、早めに草を苅ることによって、土壌中の水分をブドウのために残しておいてやれる。天気予報にも注意が必要である。草を苅れば、土が暖まりやすくなり、生えてきたばかりのブドウの新梢が、霜の害から守られることがあるからだ。カバー・クロップに、どんな害虫や益虫がいるかも確認しておかねばならない。畝間の草が苅られてしまうと、こうした昆虫はブドウ樹へと移動するのである。さらに、トラクターや草刈り機はきちんと整備されているか。トラクター運転手がまともな訓練を受けていて、正確に仕事ができる人間かどうか。我々のブドウ畑においては、あらゆる仕事についてこうした問いかけがなされ、答えが考えられているのだ。

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 デヴィッド・ゲイツ
 リッジ・ヴィンヤーズ副社長/栽培責任者