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連載コラム Vol.68

ガイザーヴィル 1966-2006
土地の個性を表現した偉大なワインと単一畑の40年を祝う

  Written by ポール・ドレーパー  
 
  リッジがもっとも早くから造っているジンファンデルはふたつあるが、ガイザーヴィルは1966年の初ヴィンテージ以来、唯一途切れることなく毎年生産されてきたものである。畑はジンファンデル、カリニャン、プティ・シラーの混植で、そのワインはリッジで最良のもののひとつに数えられる。ガイザーヴィルは、高品質なワインとして造られた最古のジンファンデルであり、その歴史は1930年代後半にまで溯る。リッジは、1962年に自社畑産のカベルネの造り手としてスタートしたのだが、自社畑であるモンテ・ベロと同じ手間隙をジンファンデルにもかけたのだ。いずれの品種も、理想的な熟度のタイミングを外さず収穫され、天然酵母での発酵を経て樽熟成されていた。このように仕込まれたこともあり、ガイザーヴィルの畑は1960年代後半から1970年代前半にかけて、ジンファンデルを栽培する最も偉大な場所であることを証明したのである。

  英国最高のワイン専門家のひとりであるマスター・オブ・ワインのジャンシス・ロビンソンは、著書『ヴィンテージ・タイムチャート』の中で、世界中から45の偉大な畑を選んだ。彼女は、モンテ・ベロとガイザーヴィルの両方をとりあげてくれている。ジンファンデルの畑が、ボルドーのトップ・シャトーやブルゴーニュで最高のドメーヌと肩を並べたのは、これが初めてのことであった。

  リッジがガイザーヴィルの畑を造り始めるにいたる物語は、初ヴィンテージの10年近く前からスタートしている。話はトレンタデュー一族に端を発するのだが、一族の長きにわたるリッジとの付き合いが始まったのが1957年のこと。この年に、レオ・トレンタデューと妻のイヴリンが、サンタ・クルーズ山脈中にあるモンテ・ベロ・リッジの山頂に、約20ヘクタールの地所を購入したのである。この地所には、打ち捨てられた古いワイナリーとブドウ畑が含まれていた。二年後、リッジの創設者たちが、1.6キロほど道を下ったところにあった生産中のカベルネの畑を買う。1960年代半ばになると、創設者たちはもっとワイン生産に向いた土地を求めて、トレンタデュー一族に近づいていった。一族は、その頃にはソノマに移住していたのだが、1880年代に立てられた古いモンテ・ベロ・ワイナリーを、創設者たちに売ってくれたのだ。創設者たちはお返しに、一族の新しい拠点であるソノマの畑で育てられたジンファンデルを買うことにした。リッジで初めてのガイザーヴィルは、この年--1966年に造られている。古いハーツ・デザイヤー農園に植わる19世紀以来のブドウ樹の果実が使われたのだが、この農園はウィットン農園ととも 一族が保有しているものである。畑はガイザーヴィルの町区の南端近くで、ロシア河の古い河川敷の西端に沿った丘のふもとにある。今日、この河は1.6キロほど東を流れているのだが、数千年前には石まじりの特異な粘土質土壌をあたりに堆積させたのであり、その幅0.4キロ、長さは5キロほどである。現在のガイザーヴィルは、その一帯に広がる複数の区画のブドウを用いている。北はウィットンとハーツ・デザイヤー農園、そこから古いカーマイケル農園の上端を通り、南はアイザック・ロングのもともとの畑の一部までである。
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 ポール・ドレーパー
 リッジ・ヴィンヤーズCEO、最高醸造責任者